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カウントダウン
デジタル時計の数字が
じわりじわりと減ってゆく。
死へのカウントダウンが始まった。
「300秒の命か」
その反対では電動シャッターが下降。
俺の存在は外界から完全に遮断された。
閉める役が必要とはいえ、
こんな所に一人きり。
「なんとも寂しい最後だな」
操作スイッチから手を離し、壁にもたれる。
撃たれた脇腹が疼いた。
もうすぐ定年だってのに
最後にババを引かされた。
「退職金は、極楽浄土で手を打つか」
苦笑を漏らし、胸ポケットを漁る。
確か煙草があったはず。
あぁ、線香みてぇだな。
煙を眺めていたら、
女房の顔が浮かんだ。
最後に一言、詫びとくか。
携帯から家の番号を押す。
コール音の後で、聞き慣れた声。
口を開いたその時、光が弾けた。
角掛みなみ様がYou Tubeにて展開されている「サカイメの書架」。
十月の応募作品です。





