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僕はあと何度
さようならという言葉。
もの悲しさを感じてしまうのは
僕だけだろうか。
さようならと返してしまえば、
なんだか二度と
会えないような気がして。
だから僕は、
「じゃあ、またね」と答える。
次への期待を匂わせる
淡いときめきを込めて。
愛犬が亡くなった時もそうだった。
硬直して、冷たくなった体を撫でるも、
それを受け入れたくなかった。
さようならとは
決して言いたくなかった。
「しばらく寂しい想いをさせるけど、
必ず迎えにいくから。またね」
かろうじて紡いだその言葉。
約束を果たすのは
まだまだ先になるだろう。
僕にはまだ、
やるべきことが残っている。
これからも
出会いと別れは訪れる。
僕はあと何度、
「じゃあ、またね」と口にするのだろう。





