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ポニーテールのマドンナ
放課後の校舎を駆ける豊。
その背へ追いついたのは親友の潤だ。
「豊、おまえ本気か?」
「今日こそ、馬場さんに告白するんだ」
声高に言い放つ豊。
頭の中には、クラスのマドンナである馬場瞳が、
とびきりの笑顔を向けてくれている姿しか見えていない。
瞳は今、部活の練習場にいる。
その姿を求め、豊はひた走っていた。
「インドア派の豊じゃ釣り合わないって」
「潤に決められたくない」
豊が体育館へ差し掛かると、前を瞳が歩いていた。
特徴的なポニーテールを彼が見間違えるはずもない。
「馬場さん」
豊が瞳の肩へ触れたその時だ。
驚いた彼女が繰り出したのは後ろ蹴り。
「馬場さんの背後に立つな、って有名なんだけどな」
潤の嘆きは風に吹き流された。





