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止まなければいいのに
「どうしてこいつは進化しないんだろう?」
傘の縁から見上げた空。
そこには、僕をあざ笑うようなリズムを刻み、
執拗に降り注ぐ雨。
「傘のこと?」
君は不思議そうな顔で首を傾げた。
「こいつ、昔から変わらないだろ?
体の周りにバリアが広がる
レインコートとか作れないのかな?」
「わかってないのね」
「なにが?」
今度は僕が不思議に思う番だった。
君は突然に傘を畳み、全身で雨を受け止めた。
「濡れるよ」
慌てて傘を差し出すと、
君は極上の微笑みと共に、腕を絡ませてきた。
そうして上目遣いで僕を見る。
「傘がなくなったら、こんなことできないでしょう?」
「今日からは、君と同じだけ傘を大切にするよ」
このまま、雨が止まなければいいのに。





