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半分
暖かな午後に、
ソファで本を読んでいた時だ。
「あった。あった」
僕の側へ来た君は、
ペン立てから、
ひょいと万年筆を取り上げた。
「貸して」「いいよ」という
やりとりなんて存在しない。
息の合った相棒同士のように、
遠慮のないやり取りだけがある。
親しき仲にも礼儀あり、
なんて言葉もあるけれど、
僕らの間では
余計なお世話だと言わせてもらうよ。
僕のお気に入りを君が使う。
たったそれだけのことが、
なぜかとても嬉しくて。
君に認められたようで、
とても誇らしい気持ちになるんだ。
好きなものは半分ずつに分け合いながら、
僕と君の人生はひとつにしてみないか。
「ねぇ。結婚しようか?」
それはとても自然な流れで、
そっと口をついたんだ。
角掛みなみ様が展開されている「サカイメの書架」。
四月の応募作品です。





