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梅雨
湿っぽい空気が、
見えない帯のように体へ纏わり付く。
この雰囲気はどうにも苦手だ。
傘を打ち続ける梅雨の長雨。
それが、うつむくおまえの頬を濡らす
涙と重なった。
幼なじみは公園のベンチへ腰掛けたまま、
置物のように動かない。
そんな空気に耐えかねて、
弾かれるように口を開いた。
「いつまでそうしてるつもりだよ?」
「あんたにわかるわけないでしょ。
私がどれだけ彼を好きだったか」
「あぁ。わからねぇし、わかりたくもねぇ」
あの男を思い浮かべて、
吐き捨てるように言い放った。
「でもな。俺がどれだけおまえを好きか。
それだって、おまえにはわからねぇだろ」
驚いた目から逃げるように顔を上げると、
曇天の隙間には、僅かな光が覗いていた。
角掛みなみ様が展開されている「サカイメの書架」。
四月の応募作品です。





