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こがねいろ
鞄を担ぎ、寂れたホームへ降り立つ。
一歩を踏み出す度、
靴底と砂がこすれる耳障りな音。
この町を出たあの日から、
知らずに積もり続けていたような、
切なさを呼び覚ます寂しい音だ。
顔を上げた先には、
まるで時が止まったように、
代わり映えのしない町並みがある。
良く通っていた本屋さえ、
今も変わらずあることが、
本当に不思議で。
きっと、都会で暮らす私だけが
大きく変わってしまった。
そうして微かに漂ってくる潮の香り。
その懐かしい香りは
海が近いことを思い起こさせた。
記憶の波が寄せるように、
学生服姿の私が駆け寄ってくる。
この町を出て成功してみせると、
希望に溢れていたあの頃。
今の私を形作った、
こがねいろに輝く、大切な想い出。
角掛みなみ様が展開されている
「サカイメの書架」にて採用して頂きました。
下記リンクから動画を見ることができます。是非♪
https://www.youtube.com/watch?v=418cQewDNfU





