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桜吹雪
何気なく立ち寄った公園で、
桜吹雪の美しさに目を奪われた。
隣を歩く彼女は夕空を見上げ、
儚くも美しい光景に目を細める。
「綺麗ね……」
「そうだね」
柔らかく微笑む彼女とは裏腹に、
僕の胸の奥へ広がるのは苦み。
散りゆく桜に
傷みがあるのだとしたら、
それはきっと、
あの子に通ずるものがあるだろう。
別れを告げた時に見せた、
悲しみに暮れた顔が蘇る。
花びらを追うように、
彼女の頬を伝い落ちた一筋の涙。
僕はそれに気付かぬ振りで、
そっと背を向けた最低な男。
桜を見る度、今もまだ、
あの涙を思い出してしまう。
この桜吹雪は、
僕の知らない所で流された
彼女の涙だとしても、
受け止めることなどできない。
どうかせめて、
幸せでいてと願うだけ。
角掛みなみ様が展開されている「サカイメの書架」。
二月の応募作品です。





