39/136
まばたき
ベッドへ寄りかかり、
窓の外を眺めていた君。
僕に気付くと、
寂しそうな顔へ
僅かに明るさが灯った。
「退院したら、温泉なんてどう?
ここはお風呂が沢山あって、
料理も美味しいんだって。
バーラウンジに、カラオケも」
ガイドブックをめくりながらも
君を見ることができなくて。
「喉が渇いちゃった。
飲み物を買ってきてくれる?」
そっと頷き、席を立つ。
ここを離れる事に安堵する、
別の僕がいる。
「ねぇ」
心の端を掴まれたような気がした。
「無理しなくていいんだよ」
「なにが?」
凍り付いてしまったように
振り向くこともできない。
「気付いてる?
あなた、嘘をつく時
まばたきの回数が増えるって」
心はこんなにも、
君に生きて欲しいと願っているのに。





