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風が騒いでいる
風が騒いでいる。
荒れ狂う唸りが
僕をなぶるように吹き荒れる。
それならいっそ僕の心へ
無理矢理入り込めばいい。
「壊してくれよ。壊してみろよ」
君との出会いも
嵐のようなものだった。
笑顔も、仕草も、その声も。
君は全ての魅力を集め、
僕の心の部屋で吹き荒れた。
掻き乱されたこの場所は、
理性や倫理なんて本も全て破れて、
足下を確認することも出来ない。
「もっと早くに出会えていたら、
違う未来があったかな?」
拳をきつく握った途端、
感じた違和感は薬指の契り。
今の僕を形作る全て。
それを遙か彼方へ吹き飛ばしたなら、
この風は僕の元にも、
新たな春を連れて来てくれるだろうか。
それとも唸りは
僕を残酷に切り刻むだろうか。
風が騒いでいる。





