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会いたいよ 〜もうひとつのプロローグ〜
チョコを一粒、口へ含む。
舌がとろけそうな甘みと共に、
カカオの濃厚な味わいが
口の中一杯に広がる。
何度も食べてきた商品なのに、
コンビニで見かける度、
つい手が伸びてしまう。
未だにこのチョコばかり好む僕を
君は呆れた顔で笑うのかな。
この味わいが引き金となって、
君と過ごした
時間と記憶まで呼び起こす。
甘く、幸福に満ちて、
とても穏やかだった日々。
どうして、このチョコを
食べ続けているんだろう。
これが好きだから?
それとも、
君との時間を忘れないため?
今はもう、
それすらも判然としない。
ただひとつ言えるのは、
君がいない、という事実だけ。
もう一度、声を聞かせてくれないか。
もう一度、隣で笑ってくれないか。
ねぇ。会いたいよ。





