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待てない俺と、欲しがる女
相手なんて誰でもよかった。
街が幻想的な光景に彩られた頃、
俺の心は深い闇に覆われていた。
ふらりと立ち寄ったバー。
誘い文句を投げれば、
ひとりの女が簡単になびいた。
化粧は濃いが、若くてスタイルもいい。
名前など知る必要も無い。
求め合う欲望と、
それを楽しむ体さえあれば。
待てない俺と、欲しがる女。
互いの利害は一致した。
ベッドの中、街で瞬く光と呼応するように、
俺の中で熱いものが脈動した。
そうして、夜明けは街の喧騒さえも飲み込んだ。
光が幻想を押し流し、本来の姿を露わにする。
夢のような時間は潰えたのだ。
目覚めた俺の腕の中にも、
化粧という幻想を失ったひとりの女。
「おまえは誰だ?」
昨夜見た、あの美女さえも、幻か。





