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見えざる手
生きるため、
好きでもないことに身を投じ、
税金をむしり取られる。
こんな苦行のような生活は
あと何年続くのだろう。
そう思う度、うんざりしてしまう。
好きなことだけをして、
お金が手に入ればいいのに。
果たして、
そんな人生を送れる人は
どれだけいるだろう。
成人を迎えて、責任が生まれた。
結婚をして、守るものができた。
そうして積み上げてきた
かけがえのないものを、
失うわけにはいかない。
逃げるわけにもいかない。
満員電車で揉みくちゃにされる僕は、
洗濯機へ放り込まれた衣類のようだ。
漂白剤へまみれるうちに、
毛髪さえも色を失うだろう。
今日も僕は見えざる手から、
背中のゼンマイを巻き続けられている。
ただ、前だけを見て歩むために。





