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孤高の天才 3-3 「古賀コン8参加作品」
「高峯さんに憧れてるんです。追いつけるように頑張りますから……か」
ひとりになった深夜のオフィス。椅子に深くもたれると、溜め息が漏れた。
差し入れの缶コーヒーの温もりに、ささやかな癒やしを感じてしまう。
「孤高の天才か……僕は、そんな大層な人間じゃないんだよ」
孤高の天才と書いて、社畜の鑑と読む。高峯にはぴったりのアダ名だよな。
そんな陰口も聞いている。
「僕はただ、お客様が満足してくれるものを提供したいだけなのに……どうしてこの考えに付いてきてくれる人がいないんだ」
仕事のために、自分を犠牲にしてきたことは否めない。そんな僕でもこの会社を移れば、ただの人に成り果てるだろう。
孤高の天才など、どこにもいない。





