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孤高の天才 3-1 「古賀コン8参加作品」
「新井。この後、一杯いくか」
「すみません。用事が」
仕事を終えて、駅へ向かう道すがら、平田さんの誘いを断ってしまった。
新人の僕に気を遣ってくれるのだけれど、何となく反りが合わないのはわかっている。
コンビニで、軽食と缶コーヒーを買い、退勤したばかりのオフイスへ戻った。
「おまえ、さっき帰ったよな」
「ちょっと忘れ物を」
苦笑して、高峯さんへ差し入れを渡す。
「今日も午前様ですか。無理しないでくださいよ。孤高の天才と言われている高峯さんに倒れられたら、仕事回りませんから」
「良く言うよ。新井くんも周りに飲まれたか」
「俺は、高峯さんに憧れてるんです。追いつけるように頑張りますから」
俺もいつか、孤高の天才になる。





