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気分ひとつで
「晴れた日には鼻歌が出るし、
雨の日は溜め息をついて、
傘を差して歩いていたの」
真っ赤な傘を差した彼女は、
足下の水たまりを飛び越えた。
「じゃあ、曇りの日は?」
「折りたたみ傘を持って、鼻歌を歌う」
その答えに吹き出してしまった。
「まぁ、今の流れだとそうだよな」
「人生って、同じ事の繰り返しだなぁって
思う日の方が多いよね。
けどね、気分ひとつで見方も変わるよね」
「そうなのかな?」
「今日は良い日になる、
って思えば明るく見える。
最悪の気分だ、
って思えば暗く見える。
その日がどうなるかは、
自分の心持ちで変わると思うの。
あなたも試してみて」
彼女が見せたのは太陽のような笑顔。
その体を蝕む難病すら、
追い払えたらいいのに。





