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夏が聞こえる
真夏のアスファルトを踏みしめる。
ステーキでも置いたら
見事に焼けそうな暑さだ。
「そんなの、誰が食べるんだよ」
思考を打ち消して苦笑する。
暑さで脳をやられたか。
すべてを夏のせいにしていると、
風鈴の軽やかな音色が聞こえた。
その微かな余韻に心が震える。
「昔からそうだよな」
夏の到来を知らせる鐘のようで、
僕には特別な音として響く。
「ラムネが飲みたい」
連鎖反応を起こし、体が欲する。
ビー玉と瓶がぶつかり合う音も、
心を刺激する夏の音だ。
幼い頃は、瓶の中のビー玉を
どうしても取れなかった。
飲み口を外せばいい。
ただそれだけのことに
気付いたのはいつだったのか。
興奮と共に取り出したビー玉は
あの時の僕には宝石のように映った。





