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蜃気楼のように
うだるような暑さに耐えかね、
コンビニで買ったアイスを囓った。
目の前を、スーツ姿のサラリーマンが
せわしなく行き交っている。
そんな彼らを眺め、
日中の公園でくつろぐ背徳感は格別だ。
「でもなぁ……」
優雅に見えるこんな姿も、
蜃気楼のように遠い幻だ。
打ち上げ花火が散り咲くように、
一瞬の煌めきにすぎない。
あと数分もすれば、
監獄のような社屋に戻るだけ。
仕事の山が待ち受け、
強制労働を強いられる社畜として、
馬車馬のように働くのだ。
「このアイスみたいに、溶けてしまいたい」
かき氷だったものは腹へ収まり、
手元には、名残である棒だけが
骨のように残されている。
「溶けているのは、俺の時間か」
苦笑を浮かべ、監獄へ足を向ける。





