119/136
真剣な眼差し
「なぁ。ちょっと聞いてくれるか」
「どうした?」
普段はふざけてばかりの彼が、
いつになく真剣な眼差しを向けてきた。
僕は金縛りにでもあったように、
目を逸らすことができなくなっていた。
ここまで思い詰めた顔をするなんて、
どんな話だというのか。
「俺、真面目に考えたんだ」
「なにを?」
「笑わないで聞いてくれよ」
「わかった。大丈夫だからなんでも話してみなよ」
ためらうような顔をしていたものの、
禁断の扉をこじ開けるような重々しさで
彼は口を開いた。
「もしも、歯磨き粉にミントが使われていなかったとしたら……
俺たちはチョコミントを
もっと美味しく感じられたのかな、ってさ」
「おまえの頭の中は平和だな」
今年も夏がやってくる。





