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情報弱者
僕は今日もスマホ片手に、
SNSの画面を眺める。
そこにはあらゆる情報が溢れ、
気を抜けばすぐに溺れてしまう。
左手に持ったアイス・コーヒーのように、
僕の裁量で
全てを飲み込んでしまえたらいいのに。
「情報を次々と撃ち込まれている気分だよ。
取捨選択の自由は与えられているのに、
カードはすべて伏せられて、
どれが真実かわからない」
隣に座る君が不思議そうに首を傾げた。
長い黒髪が肩を流れ、
僕と外界を隔てるように視界へ飛び込む。
「簡単よ。何も信じなければいいの。
私だけを信じて。
絶対に、あなたを裏切ったりしないから」
僕の左手に重ねられたぬくもりは、
疑いようのない真実。
コーヒーの中で溶けた氷が、
崩れるように音を立てた。





