109/136
成金 稔は破滅する 〜02.新年〜
「また、年が明けちまった」
ゴミ溜めのような部屋に寝転がり、
稔はつぶやいた。
フリーターのままで良いとは思っていない。
正社員として働き、
安定した生活を送りたいという願望はある。
今年こそ。
そう思いながらも、
時間だけが無情に過ぎてゆく。
掌から砂が零れるように、
命を浪費する日々だった。
現状を大きく変えるには力がいる。
そのための気力もなく、
希望の見いだせない未来には悲観しかない。
「こうなりゃ、神頼みだ」
重い体を起こした稔は、
初詣のために近所の神社を目指した。
もうすぐ目的地という所で、
それは不意に起こった。
脇見運転のトラックが路地から飛び出し、
稔の体がボールのように跳ねた。
新年の朝。
稔の意識は深淵へ向かう。





