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粉雪が舞う
彼女はいつも、
汚れを知らないような
笑顔を浮かべていたから。
僕は、君が抱える苦しみに
気付いてあげられなかった。
窓の外には粉雪が舞う。
それが、君の零した涙に思えて。
「どうして、何も言ってくれなかったんだ……」
後悔の念に囚われた僕は、
唇を噛んだまま、この場を動けずにいる。
握りしめた掌に爪が食い込む。
けれど、こんな痛みを与えたところで、
君が味わった苦痛に届くはずもない。
「お願いだから、戻って来てくれ」
ベッドで眠る君の手を握り、
祈ることしかできなかった。
「今度こそ、君をひとりにしないから」
全てを終わらせるには早すぎる。
雪に染まった景色のように、
真っ白にしてやり直すんだ。
そうして、目を開けた君は微笑んだ。





