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今年の終わりに
「今年も、あっという間に終わるな」
師走が迫ったある日。
悪友はスマホの画面を見ながら、
気怠げにつぶやいた。
「ゲームの中ではレベルが上がるけどさ。
現実の俺らはどうよ?
これをやったぜ、みたいな達成感ってある?」
「ゲーム十本クリアした」
「そういうことじゃねぇから」
苦笑いする悪友の横顔を眺める。
「そもそもさ、漫然と生きてるんじゃないの?
ゲームと同じだよ。
このアイテムを手に入れるっていう短期目標と、
いつまでに魔王を倒すっていう長期目標。
計画性が大事なんだよ」
「うっわ。人のこと言えんの?」
「一緒にするなよ。
俺、モデルのあの子と付き合うことになったから。
今年一番の成果だと思わない?」
「レベル、爆上がりじゃん」





