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雨の日
まるで癇癪を起こした赤ん坊のようだと、
ひとり苦笑してしまう。
昼間は気持ちが良いほどの青空だったのに、
夕方からは打って変わって大粒の雨。
空は瞬く間に機嫌を崩した。
私はゆったりとした足取りでカフェの二階へ進む。
そうして、いつものように
窓際席へコーヒーカップを静かに置き、
地上の様子を眺めおろした。
コーヒーへミルクが混ざり合うように、
雨が街の色を奪う。
けれど、街はそれを補うように、
色とりどりの華で足元を着飾ってゆく。
たくさんの華が行き交うスクランブル交差点。
それを眺めて、
ここでコーヒーを味わう時間がたまらなく好きだ。
恋人と待ち合わせているようなときめきを感じ、
私は雨の日が好きなのだ、と改めて思った。





