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若葉
「なんだか、私たちみたいだね」
冬の寒さを乗り越え、
温かな陽射しを目一杯受ける街路樹。
それを見上げていた君が、
嬉しそうに笑いかけてきた。
僕に出来た初めての彼女。
お互いに、ようやく制服が
体へ馴染む程の月日が過ぎた。
恋人同士。
この高揚した気持ちを
どう表現したらいいのか
分からないけれど、
彼女を心から大切にしたいという
気持ちに嘘はない。
「気が付かないの?」
「全然わからない」
拗ねたように唇を尖らせる君。
なんだか気まずく思っていると、
隣に並んだ君は、
遠慮がちに僕の手を握り締めてきた。
「街路樹の若葉、見たでしょ?
私たちも若葉マークだから、
同じだなって思ったの」
はにかんで俯く君。
その笑顔を心底可愛いと思った。





