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白きエルフに花束を【初版】  作者: 宝島 登&玉城つむぎ
白の章
1/15

白の章(壱)

                      《1》

 努力、好きですか?

「根性振り絞れば満点取れる癖にッ!さぼっているんじゃないよ、このナマケモノが!」

 根性で、何とかなりますか?

「見下げ果てました。大っ嫌い。何であなたの重いラブレター読まなければならないんですか?」

 頑張って書いたのに。

 いずれにせよ、皆誰もが、責めたところで誰も幸せにならないことを忘れている気がする。責任取れとか言わないけどさあ、もう少し知ってほしいことがあるんだ。

 初めまして。僕は風祭 礼也。レイヤって呼んでよ。

 なんか、世の中ヤケになっちゃってさ。責任の所在とか、不透明にさせ方とか、狡さとか、どうしても許せなくなってきたんだ。

 ねえ、普通に世の中渡っているお兄さんお姉さんはどう思うの?

 本の外から、僕たちに教えてくれないかな?

                      《2》

 月明かりが薄暗い三畳間の書斎を優しく照らしている。布団を敷いただけで埋まってしまうほど狭い部屋には、僕と妹だけしかいない。

 妹は華という名前で、僕は礼也という。

 僕らは父親から暴力を受けた後、よくこうしてこの部屋で身を寄せ合っている。傷の手当てをしあったり、落ち着くまで一緒に寝たりする。今日もいつものように救急箱を手にした華が、パンパンに晴れ上がった僕のほうにガーゼを当ててくれた。

 「……お兄ちゃん」

 彼女が言うには、自分のためにいつも無理ばかりしている僕がどうしても気がかりだそうで、華は心配そうに僕の目をじっと見つめる。でも、それもこれも妹を支えたい一心からの行動だ。そう伝えて僕は笑いかけた。

 「お兄ちゃん」

 そっと、華が僕を抱き寄せた。そして僕をじっと見上げる。

 「大好き」

 悲しそうに、切なそうに、花は笑った。夜がただ、悠然と過ぎていく。

                      《3》

 採光窓の掛け時計が六時半を指す頃。食卓を見回すと、相変わらず各々が好き勝手なことをして時間をつぶしている。華は不穏な両親に話しかけられないように、空っ腹に聖水を流し込んでいる。そもそも聖水自体を直接飲む場合は、お腹が空いていないといけないのでこれで合っているのだ。まさか両親を祓おうとしているのだろうか。彼女に対する『敬虔なクリスチャンである』という評価を改めるべきかもしれない。


 キッチンからポークチャップスの香りが漂っている。

奥を見やると、青白い顔をしたお母さんがブツブツと料理の工程を呟きながら、ふらつく頭を押さえて必死に立っている。


 天真爛漫・天衣無縫なお母さんだったが、今では調理と洗濯と買い物に出かけるとき以外は自室から出てこない。スマートフォンのゲームに現実逃避しているらしい。この前、お母さんの部屋から有名なアプリの効果音が聞こえたので間違いない。

 「……母さん」

 心配で仕方なくて、つい母さんを呼んでしまう。呟いただけだったので、幸い父には気づかれていない。父は僕の方に腕を絡めて飲んだくれている。

 最低な両親だ……。お母さんは被害者だけど、たまにパニックを起こして暴れるし、父は酒癖が悪くて、たまに深酔いするといつも僕たちに暴力をふるう。それで何度煮え湯を飲まされてきたことか。


 地元の児童相談所は対応が雑すぎて役に立たないし、警察は父親の人格に問題はないと昭和の価値観を持ち出して頑迷に言い張っているし、学校も警察も児童相談所も基本的に家庭内不介入の原則があるから、もうどうにもならない。もし何かの間違いがあってここで嬲り殺されたらようやく周囲は自らの過ちに気が付くだろう。虐待の軽視と事なかれ主義は、いつの世になっても変わらない。

 ふと前を見やると、テーブルの新聞にはG馬県T山市で虐待によって中学生の女の子が殺された、という見出しが三面記事で躍っていた。いつか自分もこうなるのだろうか、と乾いた笑い声が喉の奥で燻る。

父は僕の肩に腕を絡めて飲んだくれている。かなりローカルなブルーチーズを摘まみつつ、値段のそこそこするワインを、夕飯前にもかかわらず既に数本空けていた。


「ヴァインはうまいなぁ゛? なぁ、レイヤよぉ」


 ネットで調べたのか、それとも近所の呑み仲間に聞いたのか、ワインをわざわざ気取って「ヴァイン」といっている。

 酔ってかなり気分がいいらしく、ワインの銘柄にまつわる逸話を、さっきから延々と上機嫌で語っていた。


 なんでも、ブドウ畑で妖精が踊っていたところを当時のオーナーが見かけ、その妖精たちにしつこく永遠に続くダンスに誘われて、ワインをプレゼントする代わりに逃げたという。

 そのワインが「フィーンシュヴァンツ」だとか。


 どうもその嘘くさいエピソードがいたく気に入ったらしいが、いくら雑学好きの僕でも、流石にこのシチュエーションでひけらかされると反吐が出そうだ。

 実質このタイミングしか、チャンスがない。上機嫌でいるときなら、華は殴られずに済むかもしれない。妹にアイコンタクトを取ると、彼女は「神よ、華に勇気を下さい」と唱えて立ち上がった。そして、父の目の前に立ち、頭を下げる。

「お父さん、華は三ノ辺聖十字教会の牧師になりたいの。だからお願いします。神学校に通わせてください、せめて、通信制でも構いませんから」

「あ゛ぁッ、なんだって?」

 父は酒焼け声ですでにできあがっている。

「ですから――」

「おめえ、学費がいくらなのか知っとんのか?!」

 親父はぱっと僕を離し、華に詰め寄った。華は立ち竦んで、怯え切っている。肩が細かく震え、今にも泣きそうだ。だが、そのその視線は、父の双眸を真っ直ぐに串刺しにしていた。

 「ぐ、ぬぅ……!! ア゛ァァッ!! なんだその目はァ?! 八つ裂きにされてぇのかっ、このジャリクズがッ!!」

 それでも華は、父を見つめ続ける。スカスカのガラス玉みたいに空っぽな目で、じっと、じぃっと、じぃっとりと濃密に見つめ続ける。間違いなく、今、華の心は麻痺している。

 「ぃ、ひ、ひぁっ」

 恐れをなした父にゆっくりと、ゆっくりと、詰め寄っていく。次第に父も壁際に追いやられていく。————————人間にも、テリトリーが存在する。他人との物理的な距離が近いと不快に思うのはだれにでも当てはまる共通事項だ。華は、無意識の内に威圧的な態度をとることで、父のテリトリーを徹底的に蹂躙しているのだ。

 「ぅ、ひ、ァァア゛ア゛ッッ!! ブチ殺スッ!!」

 殺害宣言が出たところで武術を行使することにした。背後から奇襲をかけて首を締め上げる。それに逆切れした親父が部屋の端まで吹っ飛ばした。タガが外れたことで、妹に危機が迫る。窮地に追いやられても、尚、華は空っぽな目で父を見つめ続ける。

 この世のモノとは思えない奇声を上げながら、父は華の下腹に前蹴りを叩きこんだ。大技とされる蹴りの中でもレンジと威力が高い前蹴りをモロに喰らって、華の体が一瞬中を浮いた。庭へ続く大きなガラスドアに叩きつけられて、叫び声も上げられずに崩れ落ちた。

 「もう一度神学校に行きたいと抜かしてみろ。おめえが大事に大事に抱えているあの聖書とやらをグチョグチョでヌトヌトなイカ臭い謎物体に変えてから、生ごみとして捨ててやる。覚悟しやがれ」

 僕が今、神に一つだけ願いをかなえてもらえるなら、こう願いたい。

 【どうか、僕の継父である、風祭 厳を真人間にしてください】と。


 三月末の凍える夜の事だった。

 明かりのついた部屋で、煌々と輝く満月をぼんやりと眺めながら、僕は口の端から血を流していた。顎まで垂れ下がった血の筋が、パジャマの上着の端に血だまりを作る。

 廊下から、せわしない足音が響いて、妹の華が僕の下へやってきた。その腕には救急箱と、なぜか牛乳が抱えられている。格子模様のパジャマを着た華が、力なく本棚にもたれかかる僕のそばに、牛乳が入ったコップを置いた。

 少し考えて、掌で「ちょっと待って」と示した。ボックスティッシュを取り出して、口に宛がう。

 「ぐ、ゴボッ!ゲホッケハッ!……う、ぅっ」

 その紙に血を吐く。吐血量がそこそこ多かったので、華が慌て果てた。

 「お兄ちゃん大丈夫っ?ああもう、服が血だらけ!今、拭くね」

 テキパキとあごや顔に垂れ下がった血の筋と、ティッシュから零れた血溜まりをウェットティッシュで拭いてくれた。自分はなんて情けない男なんだろう。こうしてかいがいしくしてくれることが嬉しい反面、悲しくもなってくる。喉の奥が塩辛くなってきた。手元の牛乳が飲みたくなって、ふと疑問が浮かぶ。

 「えっと……。何で牛乳を用意したの?」

 「胃腸を一時的にコーティングして止血する作用があるから、飲んだ方がいいよ」

 それなら、と、言われた通り、牛乳を煽った。

 「はぁ……」

 何故か、華が浮かない顔をしている。また学校で顔の事をからかわれたのかもしれない。

 「華、また目つきの悪さで嫌なことがあったのか?」

 「……うん。友達が、好きな人ができたって言ったから相談に乗ってあげたの。それで、真剣な顔でアドバイスしたら、その子が泣いちゃってね。……強く励ましたから、叱られたと勘違いしちゃったみたい」

 「そうか」

 スレンダーで平均的な体を不安そうに強張らせて、華が俯く。黒くさらりとした髪が、傾いだ頭から肩へ、何の抵抗もなくするりと流れた。それから華は、あえて何でもない風にぱっと顔を上げて僕に笑いかけた。

 「今はいいの。今はお兄ちゃんの事が大事。想う相手を間違えてはいけないもの。ねえ、そうでしょう」

 「————————華」

 もう一度、にこっと笑いかけると、華は胸の前で十字を切って手を組んだ。目を閉じて、聖書の一節を唱える。

 「————————神様、あなたは『汝の敵を愛せよ』と、イエス・キリストを通しておっしゃいました。その心は、洗礼を受けていない人でも、皆誰しも生まれながらにキリストを宿しているからにほかなりません。私の家族一人一人に宿るイエス様が癒されることを望みます。そして、今ここに暴虐なる我が父によって傷つき、身の内に刻まれた傷に苦しむ兄がいます。どうか、彼の痛みと苦しみを取り除いてください。

 嗚呼、いつくしみ深き主よ。私たち兄妹をいつまでも見守り、助けて下さい。

 そして、兄、礼也の幸せが、あなたの御手の力、もしくは兄自身が信ずるものと兄自身の力によってもたらされますように。天のお父様の御前に、主、イエス・キリストの名を通してお祈りいたします。————————アーメン」

 リアリストの華らしい祈りだ。最後の最後は僕自身の力で乗り切ることもある、とちゃんとわかっている。最初から最後まで神様に丸頼みすることは決してしない。きっと彼女の様な高潔な人にこそ、栄光はあるべきなのだろうに。運命は残酷だ。

 ぱちっと、華が目を開いた。妹は、意気消沈も極まった顔で長い溜息をついた。それから虚ろな目のまま、眉根を寄せて僕をジッと見つめる。何を求めているのか察しかねてしばらく様子を見ていると、華は何某かの振る舞いを待ち望むように、僕をちらちらと気にしながら盛んに身じろぎしている。

 「お兄ぃちゃん……」

 たまらなくなったのか、自分の胸元をギュッと鷲掴みにして僕に身をすり寄せてきた。僕の腕にギュッと抱き着く。僕も思わず鼻の下が——————、おっと、男としての品性だけは失ってはいけないな。禁戒、禁戒。

 この通り、かなりの甘えん坊だ。この世にいる限りはずっとそばに居てあげたい。愛しい僕の妹だ。

 「————————。元気、出た?」

 「……ありがとう」

 救急箱を提げて駆け付け、精一杯甘えて、悲しそうに笑う様はまさに片翼の天使。神に愛されたといっていい。

「えっと、それとさ。お父さんにこれ以上殴られたら……もう」

「わかった。今……あれ、何時何分?」

「部屋にデジタル時計あっただろ、それ読んでから戻って来いよ」

 彼女の手当をうけながら、ぼうっと考える。

 年は十二歳であるにも関わらず、『聖書』の【創世記】の始めから【ヨハネの黙示録】の終わりまでだけでなく、アポクリファまでも既に全て暗記していて、その敬虔深さと知識量が認められて、牧師先生の手伝いをしている。聖書の歴史についての知識で、華の右に出る者はいない。

 つまるところ、かなり頭がよろしい子だった。正直すごい。だけど、今少しずつ動いている針、1から12までの曖昧な時計の針をすぐに読み取ることは、彼女にはこれよりもっと難しいらしい。

「ごめんね、どうしてもお兄ちゃんといっしょにいたいから。9時18分だね」

 笑うと普段からくっきりした目がさらに弓なりに細められて、とろんとしたかわいらしいたれ目になるのだ。

 考えすぎて、少し意識がぼやけて来た。軽いめまいがする。

 「まずいな。また頭がぼうっとしてきた」

 「もう、お兄ちゃんったら。無理しすぎだよ」

 「華を守るためだったから仕方ないさ。あの時のお前は立派だったと思うぜ?」

 そう言われた当の本人は、顔を真っ赤にして頬を抑えていた。こういった仕草が嫌味にならないのが華のいいところだ。……これで学習障害が無ければ、完璧な妹なのだが。

 実際、夕食前の妹は実に立派だった。華が自室に戻ると、ふとそんな物思いに沈んだ。

 古時計の規則的な針の音が鳴る部屋を、呆然と見渡す。狭い物置と化した旧書斎部屋を片付けて布団を敷いただけの部屋は、人様に殺風景かと問われれば……。まあ、その表現の範疇には入る事は入る。

 だが、古い理工学系の学術書が乱雑に詰め込まれた本棚とか、武術書の山とか、あるいは壊れた本物のリボルバー拳銃が嵌め込まれた額縁などに囲まれて寝るのは、案外悪くないものだと気に入っている。

 華が隣の部屋で祈祷文を清らかに詠唱している。しっかりと聞こえるのに、僕にとっては甘やかで最高の子守歌だ。

 今日のテーマはどうやら『暴力と正義』についてみたいだ。……自然と覚えてしまったみたいだ。

 「ん?あれ、この泣き声……?」

 そんな自慢の妹の詠唱が途中からすすり泣きにすげ変わった。

 それは次第に声なき慟哭に変わり、喉の奥から絞り上げるような鳴き声が上がったかと思ったら、突如として人の気配が消えた。

 四の五の考えるまでも無く足下の布団を蹴り飛ばし、反射的に華の部屋に駆け付けた。

 「華……っ!?」

 そこにはきゅぃぃっと掠れた悲鳴を上げてロザリオを握りしめ、腹を抱えながらCの字に横たわる華の姿があった。

 華の体調が明らかにおかしい。

 厚手のパジャマがじっとりと汗で濡れてしまっており、哀れなことに背中のブラジャーホックが露見してしまっている事が、見た目にも途轍もなく痛ましい。

 「華、はなぁっ!!大丈夫か……!?どうしたん、な、なぁっ……!?」

 よく見てみると華の布団が、彼女の腰を中心に赤く染まっていた。ひどい汗で、枕に顔をうずめていた。

 「た……すけて……」

 「もういい、無理してしゃべるな!」

 「お父さ、んに、やられた……」

  何かんがえてんだあの親父!

 「華っ、腕貸せっ。トイレまで兄ちゃんが抱えてやっから!」

 まずい、どうやら華は、父親に腹を蹴り飛ばされた衝撃で腹から内出血を起こしたらしい。1回殴られただけでこんなにドクドク血が出るのか、と不安に思う。華は痛い痛いと言いながら、なおもきつく膝と腹をくっつける。

 「なあ、逆に少しずつ体を伸ばしたほうがいいと思うぞ、丸まっちゃうともっと痛いと思う。もう、少し我慢してくれ」

 「ぅ、う、ん」

 しばらくして落ち着いても尚、痛みに震える妹を腕に抱えて一階のトイレまで連れて行くのは並大抵のことではなかった。

 「ぎゃ、イエ、スさ、まぁ……っ!!」

 トイレの扉をぎりぎりと引っ掻き、天の主の名を叫ぶ華の苦鳴を、僕は黙って聞く事しかできなかった。喉の奥からこみ上げるものがあった。

 「……ぐ、ぶっ」

 咄嗟に口を押えると、血の塊が出てきた。それだけ、ストレスでも溜まっていたのだろうか。

 「ぅぅぅっ……!!もう限界だッ!!」

 己の血の塊をぐしゃりと握りつぶし、あの伝説を確かめることを決意した。

 「前々から家では考えていたけど、もう二度と帰ってくるものか!!あの教師に相談するだけ相談したらとっとと出て行ってやる!!」

 相談相手としては、たぶん悪魔に取りつかれた家の親父よりかは一兆倍マシだ。

 「それにしたって何年も先の将来の事をきちんと考えようとしている娘に、空手の前蹴りははねぇだろ……、あの腐れ外道……、絶対にこの世界に戻ってきたら復讐してやる」

 エクス●ァック!マイファーザ-!

                     《4》

 「うぅ……。最悪だ」

 昨日はどうやら考え事をしたまま寝たせいで、それがそのまま夢に出てきたようで、極悪な目覚めだ。

 「あの糞親父……。今に見てろよ」

 父親に(はら)の底で昨日の悪態を吐きながら、朝餉(あさげ)の席に着く。

 「そういや最近は地鎮祭をやっていないな」

 階段を下りてきた我が家の暴君が唐突に耳慣れないことを言い出した。

 この父親は、実の娘に暴行しておきながら、何を平然と宣っているのだろうか。

 言いたい事は山ほどあるが、文句を言うと正拳が飛んでくるので「ああそうだったね」と、適当に返しておく。

 我が家の暴君の顔が引き()った。

 話に付き合えということだろう。

 この幼稚なかまってちゃんが。二連蹴りをお見舞いしてやろうか……などと思ったが、近所の人へ迷惑がかかるので話に付き合うことににした。

 「ああ、地鎮祭ってこの前話した三つの神社でやるお祭りでしょ?たしかこの辺の祭りだったよね」

 「近所の爺さんによるとそういう事らしい。なんでも、正式には三社例大祭というんだと。

  あの爺さん、休日の昼間に突然訪ねて来るなり、『居られるかー‼』って神奈川弁だか何だかで玄関先に怒鳴り込んできちまったから、もう参っちまったよ」

 親父でも参ることあるんだな。あの人、縁側で茶を飲んでるだけの爺さんかと思ってたんだが。

「ありゃ、それは災難だねえ。そんで、その爺さんの用って何だったの?」

 薩摩芋としめじの味噌汁をかき込みながら、返事を待つ。

 「それがどうも、三社百度参りに参加してくれる氏子を探しているんだとさ」

 「ええっ?それって、も、もしかして……」

 父は長く太息した。思い出すのも疲れると見える。

 「神社前の階段を上って、お参りして、そして降りる、ってのを三社の神社で同時に百回繰り返す……。今のご時世、とてもじゃないが誰もやらんよな」

 もっと言えば親父はどうだか知らないが、僕と華はもともと母さんの連れ子で、生まれたのは那覇なので氏子ですらない。地元民でなくて本当に良かった。

 「氏子じゃないつったら、肩透かし食らったみたいな顔して帰って行ったんだよ。何か悪いことしたみたいな気分になっちまってさあ」

 「なるほどねえ。ご馳走様でしたっ」

機械的に食器をシンクに運んでしっかりと洗い、通学鞄を肩にかけて玄関へ向かう。

 「行ってきます」

                     《5》

 「ね゛ーぇっ。返してよ、ほんともう早くもーう、い、や、だあー」

 「返してほしけりゃここまでおいでぇっ!」

 僕は鉛筆を取り合って追いかけっこを始めた同級生に、冷たい視線を投げかけていた。時々、ここは中学校なのに小学校ではないかと錯覚する事がある。そして、何かイライラする。

 この出来損ないの溜まり場と化した、教室の風景。ここが特別支援学級であるという位置づけ上、発達障害を抱えた学生の中でも学習能力が低い者が集まるのは仕方のないことだが、どうしてこうも生徒の品位までレベルが低いのか。

 「どうにかならないもんかねぇ」

 何よりも奴らときたら、己らが何の悪気もなく授業妨害していることに気づいていない。やれやれ、まったくため息しか出ないではないか。……何かむなしい。

 僕たちは、兄妹そろって同じクラスに通っている。この学校は個別授業の方針だ。

「がんばってーーーーーー‼」

 わあ、と歓声があがる。日頃のストレス発散でもしたいのか、普段は真面目な華も、彼女用に組まれた特別カリキュラム『さんすう』だけはサボって男子共の追いかけっこを黄色い声で応援している。

 ちなみにこのネーミングは、『小学生レベルの算術もできない者が、サンスクリット語を読めるからといって『さんすう』を『算数』と表記しようなどという発想は一兆年早い』という彼女らしい過激な発言に担任の井上先生が激しく賛同したことによって採用された。

 正直に思う。

 それって自虐ネタにしかならないだろう、しかもシャレにもならないしさ。

 ともあれ、なまじ妹がかなりハイレベルなクールビューティーの上に、校内一の聖女として名高いため、むさくるしい野郎共は筆記用具の奪い合いにますます躍起になっている。

 く、下らねぇ……。

 さっきまでと同じ冷ややかな視線を送ると共に、盛大に引き攣り笑いを浮かべながら、彼奴等の所業にドン引きしていた。アホらしすぎて見ていられず、何気なくただ、早く放課後になって欲しくて空を見上げる。

  放課後。結局あいつらのせいで既定の問題が解けなかったではないか。ふと振り向くと、いつからそこにいたのか井上先生が凛とした声で問いかける。

 「風祭さん、勉強は進んでいますか?」

 彼女はこのクラスの初代主任で、以前別の学校で障害児教育に長年携わってきたベテランである。

 ロマンスグレーの天然パーマと六頭身がチャームポイントだ。

 「いいえ、全く。奴らが喧しいので一向に進みません」

 僕は頭を掻き毟り、気だるげにぼやいた。井上先生は何も言わず、僕のテキストを見る。

 「そうなの……仲が良くないのもわかるけど、礼也くんからもう少し歩み寄ってもいいと思うな。だって、勉強と関係ない所ではいっつも頭いいし。麻央さんが言ってたよ。あっ、そうだ!」

 ふーん。何か名案を思いついたらしい。

 「面白い問題があったんだった!ちょっと待っていて」

 井上先生はそう言うと、僕のそばを離れ、教員用のデスクに据え置かれたパソコンを操作し始めた。

 すると窓際に据え置かれたコピー機から、答案用紙が吐き出される。一体どんな問題だろう?

 「わかりました、今日の宿題です。この地図を見てください」

 机に広げられた答案用紙は、なんとうちの近所の地図だった。

 「そこから問題を出します。来週月曜日までによろしくおねがいしますね」

 正直気は乗らないが、これで今までの時間をチャラにしてくれるらしい。ふん、なめられたもんだ。

                      《6》

 今日は自室で宿題を始めた。今回はプリント3枚だった。途中までは、何の変哲もない問題。問四は、ビリヤードの玉の角度の逆算で、解けなくてもいいと言っていたから後回し。くだらんと言っていても気になる本命は、問5。


・この地図には三つの神社が記されています。神社と神社の全ての間に線分を引き、地図上の図形の中心を求めることで、その中心に地図上では何があるのか答えなさい。なお、あなたが持っているのは鉛筆と定規だけとします。完成後は下部のシールをはがし、読みなさい。


 何でシールが貼ってあるんだ?何はともあれ、まずはやってみることにした。

 まず定規で線分を引いた。手元の筆箱にコンパスがあるが、扱いが難しいのと今回は使用禁止なのとで使えない。何か考えなければ。

 「そうだ、こういうのはどうだ?」

 次に三角形の頂点を除く角と角を合わせてそれぞれ三回折り、折り目に沿ってそれぞれの角を頂点とし、底辺の中点まで線分を引く。

 「できた!」

 狙い通りコンパスがなくても交点をつくり、中心を求めることができた。

 しばらく考えたが、なるほどこれは面白い。こういう趣向を凝らした問題は嫌いじゃない。興味が湧いたので一応やってみることにした。さらさらと解答用紙の上を鉛筆の芯が舞う。

 「やばい、これ超楽しい……」

その交点に記されていた地名は、『要石の祠』とある。

 ワクワクしながら交点に引かれた周囲の線を消し地図を見つめると、確かに中心に描いた交点上にはそう描かれている。

 たぶん正解だろうと胸を弾ませながら、白シールをはがした。

 ・この三角形は実のところ、結界が張られている地域とある。詳しい話を聞きたくば、月曜日に私のところに来なさい。

 なんとなく、あどけない表情を思い浮かべる。さすがオカルトマニアといえばそれまでだが、やたら心から幸せそうに何かを語れるのが、すごいところだと思う。




 コンコンコン、と親しげな回数のノックが聞こえた。

 「お兄ちゃん、入るよ」

 「はいよ」

 華は何も言わずに、僕の勉強机まで歩いて皿を置いた。

 その上に乗った差し入れを片手で口にする。

 フルーツサンド美味し。やはりこれでなくては。

 「マンゴー入ってるの」

 「いいね。やっぱ、この方がいいな」

 夢中で口に運ぶ。そうして、いつものように集中する。

 「片付けるね」

 「おう、ありがとう」

 「こちらこそ」

 華が立ち去ろうとする、が、僕はそれを許さなかった。


 彼女を視線で捉える。そして捕らえる。

 厚くて赤い、タータンチェックのパジャマを着ている。西洋人形のように整った顔立ちには、名前通りの華やかさと生命力が同居していた。好物の牛乳片手に肴にしたくなる立ち姿だ。あいにく麦茶しかないので、花見酒ならぬ華見茶と洒落込む。

 自分が何をされているのかうすうす気づいたらしく、華は顔を真っ赤にして俯いている。まさか、自分が鑑賞されるとは思わなかったのだろう。お互い無言ではあるが、華からすれば半ばセクハラかもしれない。

 「あのね、お兄ちゃん」

 ふと、自分の行いが度を越していたことに気が付く。華にそれを口に出させるまでやめなかったのはよくなかったかもしれない。

 「――――」

 途端に自分のしたことが恥ずかしくなって、顔を俯ける。僕は、実の妹を【そういう目】で見ていたかもしれないのだ。華は、そんな僕の態度に白けたのか、あるいは何かを期待していたのに肩透かしを食らったと感じたのか、それはわからないけど肩の力をだらりと抜いた。

 「どうしたの」

 首筋の力をわざと抜いて、華は首を傾げた。その退廃的で飾り気のない雰囲気がたまらなく愛おしい。

 「なんでもないよ」

 何でもなければ、お前を鑑賞なんかしないよ。【この想い】に蓋をするにはそれしかないんだ。ああ、それしかないんだ。本当に僕にはそれ以外なす術がない。

 「お兄ちゃんごはん……って、お兄ちゃんがちゃんと宿題してる!! ね、今日はチーズフォンデュだよ、一緒にソーセージたべよ!」

 濃厚でねっとりした雰囲気を放り捨てるように話を逸らされて、ぱっと意識が戻った気がする。そして、うげっとなる。華がまだ小さくて覚えていないだろうが、僕が6歳のとき一度相伴に預かった……。だがそういや、食べたのはほぼ野菜だけだった気がするんだけど!

 僕の苦虫を噛み潰したような顔を見たとたん、彼女はティッシュを持って来ようとして困っちゃった子犬みたいな顔をした。……可愛い。じゃなくて!

 「解った! 機嫌損ねないうちに今すぐ行くよっ」

 こうしちゃいられないと、猛烈ダァッシュッ!むろん後でしこたま叱られた。

 

                       《7》

 三月末ごろ特有の暖気と涼風が同居する微妙な天気の中、僕は少し寄り道をしていた。

 それにしてもいつもの通学路の途中に先生の家があったことに、今までどうして気が付かなかったのかは自分でもわからないが、とにかく僕は井上先生の家の前で呆然と突っ立っていた。

何故ならば。

 「で……っか!」

 かなり広大な敷地を持つ瓦屋根のお屋敷だったからだ。

 枯山水が引かれた美しい日本庭園には高そうな鯉が泳ぐ池があり、指先一本でも触れようものならそれこそ何百万円もの弁請沙汰になりかねないほどの価値が有りそうな盆栽が、有田焼の植木鉢に植わっている。門をくぐれば時代をさかのぼった気分だ。ガチガチに緊張しながらも意を決して正門前のインターホンを押した。

 「はい、どちら様でしょうか?」

 「風祭です、お話の続きを聞きに伺いました」

 緊張のあまり、柄にもなく謙譲語を使ってしまった。

 「あらそう?来てくれて私はとてもうれしいですよ! どうぞ、『バレないように』勝手口から入ってね」

 「は、はあ」

 どうやらよそよそしくは思われていなかったようで、僕はほっと安心した後に言われるがままに井上邸の勝手口へと向かっていった。          

                       《8》

 カシミヤのガウンを羽織った井上先生が揺り椅子に座り、優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいた。

 「いらっしゃい、よく来てくれましたね。 そうね……その椅子でも掛けて、ミルクティーでもいかが?」

 日本庭園で見た「和」の雅やかさだけでも大したものだが、内装の豪奢さも相まって最早眩暈がする。

 この圧倒的なブルジョア感に気圧されてまたもや僕は立ちつくしてしまった。

 このままだと三十分は棒立ちになってしまうかもしれないと思い、「でで、では遠慮無く!」と突飛なタイミングで素っ頓狂な声を上げて、日本庭園が見える窓辺の席に着いた。

 広々とした窓からの採光は淡く細やかだ。その恩寵を受けた庭園の様は、透き通るような水色と碧色に彩られた一幅の水墨画のように思えた。

 心を強く奪われ、ぼぅ、と見惚れていると、ふと井上先生の視線を感じた。

 「本題に入りましょうか」

 「はい。やっぱり気になりますから」

 そう固くならないで、と微笑む井上先生にここまでの豪邸は初めてですので無理ですよ、と苦笑いする。

 「まず、日枝神社、椿稲荷神社、八雲神社の三社で同時に行われる三社例大祭の事は話した通りだと思うけれど、そこまでは覚えていますね?」

 首が千切れ飛びそうなほど頷く。

 「あくまでも伝説です。 ただ、お駄賃とかそういうレベルではありません。知っていますか? 異界に飛んで、そのまま戻らなくなった男女を」

「……ふたりぐみ、なんですか?」

「いえいえ、大抵はひとりで務めを果たされたそうです。 基本は男の子なのですが、稀に巫女さんが挑戦することもあるのですよ。 ……どちらであっても、生きて帰ってきていませんけどね」

「へえ、さすがオカルトマニア。 もし僕がそっちに行くとしたら、どうなるの?」

 「それならよかった。 これから話す計画を簡潔に話すと……。

些細な疑問だった。井上先生は少し考えて、いくつか僕に聞いた。

「そうですね、お話をまとめると

一、運が良ければ、の話ですがその内お年寄りの方々から、氏子でなくてもいいから参加してほしい、と風祭さんへ依頼されます。

二、風祭さんが例大祭が行われる前に特殊な細工を施した狩衣を着て、要石の祠で神楽を奉納します。

三、私たちが住むこの『陰界』という枝葉に当たる世界から、『陽界』と呼ばれる根っこの異世界へいってらさーい、という訳です」

 あまりの突拍子のなさに、しばらく僕は唖然とした間抜けな顔のまま絶句した。やっぱり、根拠とか証拠とか、そういうの気にしちゃいけないのかな?

 「本当に、それだけで良いのですか?」

 「そうですよ、こことは違う世界という場所は分厚い扉で閉ざされているだけで、意外と近くにあるものなのです。私たちが住むこの宇宙は全部で七つある『陰界』の一つでしかないのですよ」

 またもや絶句。

 その阿呆面を見た先生がクツクツと笑う。

 「まあ、この話を信じろと突然言われても信じられないでしょうし、この話は無かったことに……」

 「その話、乗ります。ただし、女性用をもう一着」

 「しませんよ?」

 わざわざ話を遮ってまで取引に食いついたので、その返答に大いにずっこけた。

 「その代わりにこのことは誰にも話さないと約束して下さいね?」

 「ハイ!」

                     《9》

 下校途中のいつもとは少し違う帰り道。

 田舎でもこうして歩いていると何か未練があると思っていたが、実際そんなことはなかった。昨日の「ゆるして……」という悲痛な声のほうが余程身にしみる。あれから適切な処置を受けたとはいえ、昨日今日とでぐったり度合いが増していた。相対的に無関心になっていて不利なのを差し置いても、やっぱり、未練なんてなかった。

 「これで、これで華を救える」

 ついに、ついにこの日が来たのだ。僕は長年『異界の門を開く方法』を探し求めてきた。空手を極めると決めたのもこれがきっかけだった。全てはこの日の為に!

「このくそったれな世界を抜け出して、僕らは旅に出るぞっ‼」

 その為にはやるべきことは山ほどある。

 決めた。

「師匠の下へ行こう。まずはそれからだ」


                     《10》

 道場へ赴くと、この時期には珍しく師匠が庭掃除をしていた。こちらに気付いたらしい。

 長年にわたり着古された道着、そして黒帯を超えし究極の帯、赤帯をお召しになってらっしゃる。赤帯とは、空手界に功績を残した者しか帯びることを許されない『名誉段の証』だ。

 このお方こそ、木村師匠。僕が『この世界で』一番畏敬するお方だ。

  井上邸とはまた違う趣があるとはいえ、僕は庭先で、僕はやおら、されども突然、師匠の前に跪いた。

 「木村先生、ご報告致します」

 師匠は沈黙を堅持していた。だが、跪いた僕の目を見て何かを悟られたようだ。

 「ついにこの日が来たか」

 「はい、『探し求めていたもの』が見つかりました」

 それとは何か、と尋ねるほど此の方は野暮ではなかった。

 「そうか。来い、見せたいものがある」

 「はい、参ります」

 玄関で靴を脱ぎ、いつも通る廊下をわたる。途中から何か変なことに気づき、やがて、息をのんだ。師匠は僕を道場の神棚の御前にお連れして下さった。

  師匠は二礼二拍手一礼の後、神棚の神にこれ以上ないほど真剣に祈った。

  その祈りは僕と先生にとってとても貴いものだった。

 「我が弟子に幸を授け賜ります様、畏み畏み申す」

 そして師匠は有ろうことか、()()()()()()()()()()()()

 「師匠……!?」

 「よいのだ。すでにこの時が迫っていることを、私は知っていた。身は清めてある」

 「……はい」

 そして、ご神体を開封し取り出す。

 「これは」

 師匠の手の中にあったのは、呪符ではなく、この道場の秘伝書だった。しかも保存状態がかなり良好だった。

 「これは……、剛柔流空手の基本にして奥義(おくぎ)である『三戦(サンチン)』、そして最高位形、『壱百零八手(スーパーリンペェ)』の『上』・『中』・『下』、それぞれを記した教本だ」

 「……、壱百零八手(スーパーリンペェ)の、『中』と、『下』は、失伝して久しかったのではないのですか?ならばこれは……」

 「そうだ。流祖、宮城長順先生の直筆だ。これを世に広めれば、間違いなく空手界の歴史に残る発見となるだろう」

 だが、と木村師匠は区切る。

 「これを先にお前に授ける。免許皆伝だ」

 「そんな……!僕なんかにはもったいのう御座居ます!」

 「謙遜するな」

 「……」

 「人を侮る前には必ず自分を侮っているものなのだ。それは、必ず命取りになる」

 「はいっ!分かりました。ありがとうございます!」

 思わず歯を見せて笑ってしまった。

 いつもならそんな笑い方をしようものならば、顔面に『戦いの最中に歯を見せると折れるぞ』という意味の鉄拳が飛んでくるのだが、この時ばかりは師匠もどこか満足気に苦笑いするだけだ。

 「……礼は言わずとも良い。これから、お前一人で修練を積むことになるだろう。

 いままでの稽古の内容をしっかりと思い出して、これからも精進するのだ」

 「師匠、今までありがとうございました」

 最後に師匠へ空手の礼を捧げた。僕が全任を置く師匠の訓示をしっかりと胸に刻んだ僕は、こうして道場を後にした。

   

                    《11》

 

 僕は、免許皆伝の証書を大事にボストンバッグに仕舞い込み、道場の門を振り返った。

 師匠と、ついに別れたのだ。

 忘れ難い修行の日々について思いを馳せる。

 「守破離か……。僕はやっとここまで成し遂げたんだな……」

 感慨深く木村邸を眺める。

 三社例大祭を待っている暇はない。予定より一か月早いが墓地に行かなくては。

 「よし……、征こう」

 僕は華を連れるため、いったん家に帰ってあの要石の祠へと向かった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 文化背景とかは割と考えられていると思う。ナーロッパがありふれているおかげか、こういう文化融合はすごく自然。自分はサラが好き。本人の他の著作の傾向もあるかもしれないが、自分の思いが素直に出て…
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