おまけ1
カルロスとロジーナが出て行くと、ニコラスはソファーにふんぞり返った。
「あの子、普通じゃないね」
「やはりそうか」
クレメンスはニコラスの真正面に座る。
「人間だけど、なにか違うんだ。それが何なのか、オイラにもわからない」
クレメンスは腕を組み視線を落とした。
「それより。大丈夫なの?」
ニコラスは身を乗り出してクレメンスを覗き込む。
「ん?」
クレメンスは問うようにニコラスを見返した。
「妹ちゃんがなくなった時と同じくらいの年頃でしょ、あの子」
「うむ」
クレメンスは再び視線を落とすと指を組み、しばらく考え込んでいるようだった。
「償いをしたいのかもしれんな」
クレメンスは「フッ」と自嘲的に嗤った。
「自覚してるんならいいけどさ」
ニコラスはソファーの背もたれに身体をあずけ、大きく伸びをした。
「すまんな」
クレメンスがポツリと言った。
「なぁに水臭いこと言っちゃってるの。オイラとクレちゃんの仲じゃん。それに、お互い様でしょ?」
ニコラスは首をかしげながら、クレメンスを覗き込む。
「そうだな」
クレメンスはニコラスの瞳をじっとみつめ、「フッ」と笑った。
ニコラスはホッとしたかのように微笑むと、ソファーにふんぞり返り、組んだ手で頭を支えるようにしながら天井を見上げる。
「母上が逝った」
ニコラスがポツリと言った。
「そうか」
クレメンスは視線を少し落とす。
「ホッとしたよ。これでやっと縁が切れる」
ニコラスはささやくような声でつぶやく。
「本当にいいのか?」
クレメンスは探るように、ニコラスをじっと見る。
ニコラスは無言で天井を向いたままだった。
「少々もったいない気もするがな。ニコ、お前ならば、きっと立派な」
クレメンスはそこまで言うと言葉を切り、「フッ」っと息を吐く。
「いや。止めておこう。今さら言っても詮のないことだ」
ニコラスは「よっこらしょ」と座りなおした。
「クレちゃん、ありがとう。まだ完全にとは言い切れないけど、オイラはもう大丈夫だ」
ニッコリ笑うニコラスを見ながら、クレメンスは目を細めた。
「そうか。お前は逞しいな」
「クレちゃんのお蔭さ。オイラこれからもタカリに来るからね」
ニコラスはニタァといつもの気味の悪い笑みを浮かべる。
「お手柔らかに頼みたいな」
クレメンスはそう応えると「フフフ」と嗤った。