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入門翌朝
朝食の支度をしていたカルロスは、ハッと振り向いた。
台所の入口から、寝間着姿の幼い子供がジッとこちらをながめている。
「おぅ、ロジーナか」
バカでかい声に、昨日入門したばかりの少女はビクッと目を見開いた。
「おはよう」
カルロスは硬直するロジーナに優しく笑いかける。
硬直していたロジーナは警戒するようにカルロスを観察していたが、カルロスがそのまま動かずにいると、視線を少しそらして「おはよ」と、小さくボソッとつぶやいた。
「おはよう」
カルロスはもう一度ロジーナに向かって爽やかな大声で挨拶をする。
ロジーナは口をへの字にゆがめて視線を床に落としたが、すぐに顔を上げた。
相変わらず小さな声だったが、先ほどよりはハッキリ
と「おはよう」と返してきた。
「ロジーナ。良くできたな」
機嫌の良さそうな声とともに、クレメンスが現れた。
「師匠。おはようございます」
カルロスは深々とお辞儀をする。
「おはようごじゃいます」
ロジーナもクレメンスに向かって、ぺこっと頭を下げた。