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カーラの主本

作者: ととと

うっかり二作目。



あなたは、精霊というものをご存じだろうか。


地水火風の四大元素に分けられる?ノンノン。

もちろん、地水火風の精霊がいない訳じゃないんだけど、それだけでもない。



精霊というのは、神様の卵たちなのだ。



神様は不老不死だと思われがちだけれど、実のところ見た目が老けないだけで三万年くらいで寿命を迎えてしまう。

その後継として、精霊たちは草木や動物たちや人間…自分の守護すべきものなどと関わりながら成長し、いつかは神様となるのである。



精霊としての見た目は様々だ。人と関わる精霊は人間形をすることが多いけど、この前会った風の精霊は緑色だったけど狼形だったし、水の精霊は水滴の状態で宙に浮いてた(本当は球体になりたかったらしいんだけど、重力に勝てなかったんだって)。




さて、長々と説明ばかりしてしまった。退屈だったかな?

でもほら、仕方のないことだよ。私は知識と記録の精霊だから。







その男が父から仕事を引き継いで二年が経った。

そろそろ一年の取り纏め時期となるので過去のデータを参照すべく書斎に来ていた。

目当ての本はすぐに見つかったが、ついでに見覚えのない本まで発見した。


物語の本だろうか。


タイトルには見覚えのない文字が踊っていた。



………手を翳すと微かに神力を感じる。

どうやらただの本ではないらしい。


出来うる限り、そっと本を開いた。








「ん?ぎゃー!

乙女になんてことしてくれんのー!」



ぱたむ。



幻覚かもしれない。


もう一度そっと開く。



「もー、乙女の部屋にノックも無しってどういうことよ。」



やはりいた。


本の上に猫足のソファ。

その上に(今は)上品に座る白いワンピースの少女。



「本の精霊である私にとって、この主本マスターブックは言わば家のようなもの!くつろいでるんだから邪魔しないでちょうだい!」


「…精霊?」


「そうよ!」


精霊殿は大変お怒りのようだ。



極希に、精霊と呼ばれる不可思議な存在が確認されることがある。

有名なところでは二百年ほど前まで実在したと言われる愛の精霊だ。唐突に現れてはあれやこれやと世話を焼き、時に事態を深刻にし、唐突に消えるという気まぐれな生き物。

最後に確認された時には成人した美女(時に美男)であったとか。


愛の精霊は基本的に人の(愛の)手助けをしていたらしいが、怒らせると手が付けられず一度は戦争が引き起こされるところだったとか。



個体差はあるだろうが、これはまずい。


本の精霊はどういう報復を行うのだろうか。




「顔色悪いけど、大丈夫?」


「え、あっはい」


失敗した!


「じゃ、私続き読むから。閉じて」


「えっ?」


続き?何の??



「つかぬことをお伺いしますが…」


精霊はソファに寝そべって目線だけをこちらに向けた。


「どうして我が家の本棚に?」



「決まってるじゃない。本を読むためよ!」



どうやって?と思ったのは顔に出ていたらしい。


「そこは精霊の秘密。毎度取りに来るのは面倒だからしばらく居座るわ。全部読み切るまで一週間ってところね」


「左様で」


「閉じたら本棚に適当に差しておけばいいわ。終わったら勝手に出て行くから」


「はぁ…」


とりあえず、報復はないらしい。

良かった、これである日突然本が白紙になったりすることもないだろう。


「なによ不満げね?あぁ、家主に自己紹介でもしとけって?しょうがないなぁ」


自己完結?


「私は知識と記録を司る本の精霊。カーラと呼べばいいわ」










生まれて僅か三十年の本の精霊と、後に歴史に名を残し物語の主人公となる男の出逢いは、とある本棚の前で起こった。

本の精霊:カーラ


生まれてまだ三十年くらいの新米精霊。

新米なので、自分だけでは姿が保てず、神様からもらった寄り代(主本)が必要。

主本の中では好きに過ごせるので座り心地の良いソファと温かいミルクティが用意されている。

趣味は読書。というか仕事の一環。


精霊としての特性

全ての本を識る。気に入った人間にはその知識を授けることがある。

が、まだ新米なので、精霊としての仕事は主本のサポートを受けている。



どっかのご領主かもしれないし、商会の会長かもしれない。

お貴族様かもしれないし、後の勇者かもしれない。

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