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原初の地  作者: 竜胆
2章:手血肉燐の都
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未だ外は遠く

本日二話目です。



 16日目。


 猛烈に気持ちが悪い。

 魔力を動かしていたら、吐き気が止まらなくなった。

 というか、勝手にグルグルと動き出した。

 未だに胃の辺りで動かす以外に成功していないというのに、これはまさか暴走状態なのか?

 とにかくしばらく休んでゆっくりしようと思う。


 

 な、何だ今のは!? 俺の口から出て行ったアレは何だ!?

 あまりにも気持ち悪くなって、一度無理やりにでも吐いてみようと思って扉を開けたら、口から何かが飛び出した。

 いや、認めたくないんだけど……あれは、手?

 人の手だけが俺の口から飛び出して走っていった?

 ホラー家族の一員みたいなのが走っていったんだけど!?

 俺の体はどうなってんの!?

 

 ……胃の辺りがものすごくすっきりしている。

 そして、魔力が無い……。もしかして、魔力だと思ってたあれって……アイツ?

 え、俺必死に体の中でアイツ育ててたのか?


 今日はそれから一日塞ぎこんでしまった。


 

 21日目。


 全然日記を書く気が起きなかった。

 だって、あれが自分の体から生まれたなんて思うと気持ちが悪すぎてもう……何度なかったことにして日記を破ろうと思った事か。

 まぁ、過ぎてしまったことはしょうがないかと思い直して日記の再開をしよう。


 一つ発見があった。

 ハンドマン(勝手に命名)を生み出してから、しばらく自分の中で葛藤している間に死肉を食う必要が無いことに気づいた。

 どう考えてもあの肉食ったのが原因であいつが生まれたと思うと、千切ってきたはいいけど食べる気が起きずに干からびさせて何度も捨てた肉。

 何日も繰り返していてふと気づいたら、空腹は起こしているが全く弱っていない。

 なんてこった、どうやら俺が生きてるのって左手で死肉を枯らしていたかららしい。

 栄養? を吸収して枯らしていたようだ。

 

 つまり、栄養も全て吸い取られたガラのような物を無理やり食っていたわけだ。

 そして、体内に入ったガラが再び俺の中で出汁に戻されたようにして栄養? を得てあいつが生まれたらしい。

 

 あのゲロマズ肉を食わなくてよくなったことに喜ぶべきなのか、それとも最初から気づけなかった自分を責めるべきなのか。

 

 ただ一つ分かったのは、どうやら死肉という存在がある意味でヒトモドキとイコールであるということが判明した。

 恐らく、死肉からヒトモドキが生まれるんだろう。ただ、あの巨大な赤ん坊は例外というか特殊個体ということだろうか。

 なんなんだろうかこの死肉は。

 この出来事で、また一つだけ自分の中に一つのピースが生まれた。

 最悪の出来事だったけど、ちゃんと前に進めているんだと信じたい。


 種から出た芽を地面に植え替えていたんだけど、いまいち成長が悪い。

 石畳をひっくり返して出た地面だからだろうか? それとも日の光だろうか?

 もやしみたいな白い芽が伸びている。

 


 30日目。


 毎日壁を登ってみたりしてたら、部屋の角に貼りつけるようになった。

 忍者っぽくてうれしくて一日のほとんどを部屋の隅で突っ張った状態で過ごしている。

 ……蜘蛛男とか言うな。

 目指せ忍者マスターだ。


 それにしても、相変わらずこの肉はドブマズ過ぎる。

 しかし、一つ思いついたことをするためには絶対にこれは食わざるを得ない。


 芽が、萎れて来た。

 どうしよう、このままじゃ枯れてしまう。なんとか栄養を足してあげたいのだけど……。

 とりあえず、光が圧倒的に足りない。

 枯れかけたもやしを数本食べることにした。

 涙が出るほどうまい。なんだあのドブ肉、あんなの人間の食べ物じゃねぇ。

 食に対するハードル、下げ過ぎて地面に埋まってたわ。


 35日目。


 いよいよだ。

 とうとうこの日が来た。  

 この体の不調は、以前感じたあの感覚と同じ……!

 言うなれば、胎動!!


 行くぞ! 恥も醜聞もすべて吐き捨てる!

 男としての矜持? そんなもん精子の頃からオヤジの体内に忘れて来たわ!

 あ、俺転生したから親もいねぇんだわ。


 ……あ、出そう。





 ……生まれる奴って決まってないのな。

 何がって? 

 決まってるだろ。ヒトモドキだよ。


 俺、頑張って出産したよ。

 俺自身、転生して生後一ヵ月なのに既に二度の出産経験ってどんな昆虫生態してんだよってはなしだよ。

 長男はもみじのような手をした元気な手だったよ。生まれてすぐ家出するやんちゃな奴だった。

 次男は玉のようなコロコロした目玉だった。


 ……真面目な話をすると、実験を行おうと思っている。

 自分の体内からあんな化け物が生まれるってことに衝撃を受けはしたが、よくよく考えるとこれはチャンスだ。

 ヒトモドキの強さや弱点を観測するために、あえて自分の体内でヒトモドキを生成する。

 ハンドマンの姿を見る限り、逃走中に襲ってきたような化け物達ほどの脅威は感じなかった。

 そう思って、無理やりあの肉を食って再び劣化ヒトモドキの生成を行ったわけだ。


 ……結果は失敗。

 今回は逃げ出されたら困ると思って部屋の中で吐き出した目玉は、地面に転がった瞬間に焼けただれて溶けてしまった。

 どうやらヒトモドキは、死肉以外の部分に触れることが出来ないらしい。

 そう言えば腕女も部屋の壁に触らないように動いていた。死肉の無いところが安全なのはそういうわけか。

 ある意味では収穫と言える情報だが、出産にはかなりのリスク(精神的)が伴うため、もっと収穫がほしかった。

 

 ようやくこの状態を脱出できると、希望に湧いていつもにましての自分を取り戻せた気でいたんだけどな。

 テンション上がりすぎてちょっとキ○ガイみたいになってたことは否めない。

 だけどまだだ、まだまだやれることはある。


 さすがに一か月を過ぎたあたりから、かなりきつい物を感じ出した。


 ……そろそろ、外へのアプローチが必要な時期なのかもしれない。

 行き詰った状況を打破する方法は、やっぱり外部からの新しい刺激なんだろう。

 正直、このまま引きこもって居ればと言う思いは強い。

 だけど、嫌なんだ。

 

 この部屋は、どこか日本で引きこもっていた時の自分の部屋に似ているから。





この話書いたときのメモ


体内に魔力と思えば化け物。

アダム○ファミリーの手みたいなのが走ってく。

化物の生態調査に役立つかんじ?



何故に疑問形。


この後も、もう少し日記形態が続きます。

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