Re:スタート
言い忘れてました。
この章から、さらにファンタジーというか創作物要素が強くなります。
リアル指向だったり、細かい事気になる方は今すぐお手持ちの端末を窓から放り投げてこの作品が目に入らないようにしてください。一章の原初のが好きだったという方も、二章はなかった物と心の中で完結済み表記にして端末を窓から放り投げてください。
「ははは……」
そうだよ、思い出したぞ。
俺は、この世界で生きるために眠りについた。
太古の森を抜けた俺は、平原で暴走した。さらにとげぞうは倒れ、薄れる記憶の中この世界の人間に襲い掛かった。
なんとかとげぞうだけでも助けたいと願ったまま、暴走した俺は負け、そして……
「……転生した」
森での地獄のような生活、空腹に倒れそうになり、化け物に追われ、絶望し、とげぞうと出会い生き延びた。
熊に、トカゲに、龍に襲われ、人の痕跡を見つけ何とか森を脱出した。
やがて知った、晶の死……。
頭の中を、電撃に打たれたかのように一瞬にしてそれまでの光景が頭の中を駆け抜ける。
なるほど、全部理解できた。
確かに俺は、肉体を作り替えられたらしい。
眠りに着いたと同時に、俺は老婆らしき声とわずかながら情報の共有を行うことが出来た。
どうやらこの世界に迷い込んだ時に、俺の体は変質が始まっており、化け物になる一歩手前になっていたらしい。
そこからどうにかこの世界の人間に馴染むようにしてもらったが、その際に肉体をほとんど作り替える必要があったようだ。
「んで……これが、俺の新しい体ってわけか……。若いな?」
そういうもんかなと、案外動揺していない自分が居る。
まぁ、十分自分の中で納得するまでの時間はあったわけだし自分が選んだ道なのだからそのことに関して慌てるわけはない。
ただちょっと寝ぼけてたのか、転生していたことを失念していた。
自分の体を見渡せば、先ほど見た自分の体から新たな発見があるわけでもなく華奢な自分の体が頼りなく感じる。
服装は不思議なことに、生前? の恰好をそのまま体型に合わせてリメイクされている。石化した靴だけはどうにもならなかったようだが。さらば空気冗談5。
まぁ、転生というくらいなんだからある意味で生まれたばかりみたいなものか?
それならこの体も仕方ない物なのかもしれない。
んで、そんなことよりもこの状況なわけだが……。
「どこだよ此処? それに、さっきのは一体なんだったんだ?」
目が覚めたらいきなりめちゃくちゃヤバそうなおっさんに殴られて、そんでそのおっさんが唐突に何かに攫われた。
ダメだ。自分で言っててさっぱり意味が分からん。
目の前の化け物が、あとから現れたさらにデカい化け物に襲われたようなインパクトだ。
一体どこの三流ホラー映画の冒頭だよ。
訳の分からないままかいた汗が、じっとりと体を濡らしていた。
「転生……、石の小部屋、見知らぬ男、地獄、化け物……閉じ込められた?」
先ほどの男から得た情報の断片を口に出してみるが、この状況につながるようなことが特別見当たらない。
だが、意味が分からなさに焦りはある物の、心はどこか落ち着いていた。
辺りを見渡せば、そこは石の壁に囲まれた狭い部屋だ。
うっすらと赤い光とでもいうのだろうか。キラキラとした霧のような物が光っているおかげでかろうじて周囲を見渡せる。
どうやら男が入ってきた時と出て行ったときに入ってきた赤い霧のようだ。
「ん……? 壁に何か書いてある? 出して……?」
それを認識した瞬間、ぞわっと背筋が粟立った。
出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出してここから出してここから出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して
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それは、気づかないほど小さな文字で、壁一面に書いてあった。
石かなにかでガリガリと掘られたような文字。
時々、「あの女に騙された」「許さない許さない許さない」「……敗した」「もう……でる」「私はランネ……」などかすれていたり違う言葉も刻まれているが、一貫してそれは呪詛と嘆願の言葉だった。
「な……なんなんだよここは……」
見なかったことにしたかったけど、どう考えてもあの骨の人が書いてるよな……?
くそ、早くこの状況がなんなのか把握しないと――
扉は相変わらず妙な肉に浸食され続け、ウジウジと微かな音を立てている。
まるで悪い夢の中に居るかのように現実味の無いその場所をしばらく探索するも、特に何も見つからない。
ただ――
――ドンドンドンドン!!
「――っ!」
時折、こうして扉を強くたたくような音が鳴り響き周囲に緊張が走る。
その音が鳴る度に、俺は焦りを強めていた。
「っくそ、マジでどうしろってんだよ。この状況、絶対ヤバいだろ……」
新しい人生のスタート地点は、すでに命の危機にさらされた場所でした。
そんなシャレにならないプロローグが頭の中で流れている。
部屋にはドアが一つしかなく、あとは天井にある換気口のようなものが空いているだけだ。
「死肉のある場所は危険だ」
男の言葉が、脳裏に浮かんだ。
あれが扉のすべてを覆ったら、もしかしたら扉が開いてしまうかもしれない。
焦った俺は、慌てて天井の中へと移動する。
石が敷き詰めてはある物の、そこに人一人くらいは寝ころんではいれるスペースは存在する。
そこに無理やり上り詰めたのと同時だ。
――バンッ!!!
登り切った俺の足元で鳴り響いていた扉を叩く音は、とうとう破壊音と共に鳴りやんだ。
……っは。なんだよ、人か……――っ!?
体勢を変えこっそりと下を覗き込めば、そこに扉は無かった。
破壊されたのか、吹き飛ばされたんだろう。
扉の代わりにそこにあったのは、赤い長方形。
そこから真っ赤な霧がドロッとした液体のように部屋の中へと流れ込んでいる。
その赤い中から現れたのは、人の手のような物だった。
赤の中に、異様に浮かび上がる恐ろしいほど白く美しい女性の手。
その手がゆっくりと伸び――つづけた。
まるで終わりを見せない蛇の体のように、腕から先だけがいつまでも伸び続け部屋の中へと侵入してくる。
その手を見た瞬間、俺の背中からブワッと汗が噴き出すのを感じた。
アレはヤバい。
一目見た瞬間、そう理解できてしまった。
大概のやばい生き物は森の中で見て来たし、実際何度も命を失いかけた。
だが、あれは別だ。
森のファンタジー生物たちを虎やライオンと例えるのなら、あれは……何百もの死が集まってできた怨霊とでもいうのだろうか。
比べるものが少しおかしい気がするが、他に例えようがない。
生き物とは隔絶したような存在。死を司るような、何か。
腕は何かを探すようにして部屋の中をうねり続けるが、どうやら石の壁を触れることは出来ないらしくただ部屋の空間を這い回るだけ。
関節はいくつもあるらしく、カクカクと折れては少しずつ部屋のなかを埋めていく。
……う、うわあああ!!
心の中で、声にならない悲鳴が上がる。
やばいっ!! 死肉で覆って部屋の中をくまなく探る気だ!!
俺のことに気づいてる!?
そのことに気づいた俺は、ようやく自らの体の硬直を振り払って体を入れ替えゴロゴロと転がる石を必死の思いでかき分け始めた。
たまらねぇぜ!
寝てるだけでザクザクポイントが入ってきやがる!
おい!竜胆!書いて書いて書きまくれ!俺にもっとポイントを貢ぐんだよぉぉぉ!
ふははははは!次はこのポイントで田楽を山ほど買ってやるぜぇぇぇ!