舐めプ
すみません、昨日は更新できませんでした。
「ダ……ダンジ……」
「兄貴……!」
「ダァァァァァンジジジジィイィイィイィイィィ」
タンジーの姿を認識した瞬間、男の様子は一変した。
それまでのうつろな表情から憤怒の表情を浮かべ、咆哮を上げた。肌が震えるほどの巨大な音だ。
さらに、緑色をした男の筋肉がミシミシと収縮していく。
「な……なんだあいつ? 縮んでいく……?」
「本当に人……なのか?」
デグー達が、狼狽えながらも呆然としていた。
罰鬼なんかにビビってたくらいだからコイツを見れば当然か。
周囲の魔素が年輪を帯びた筋肉に収束し、禍々しいオーラを放っていくではないか。
おぉ、魔素が渦巻いて禍々しい。これが周囲の魔素との濃度差で発生するっていう魔紋ってやつか。
「ゴハァァァァァ……」
立っていたのは、小さな紫色の男だった。
背丈は縮んだはずなのに、その存在感は先ほどの罰鬼なんて比じゃないほどの大きさだ。
その目は、もはや何も映していない。
目から生えているのは、毒々しい赤色をした新芽だ。
――ゴッ!
「ひっ」
樹男が、タンジーに向かって突進したが、とんでもない速度だ。
魔法でも何でもない。ただの純粋な筋力による速度。
かろうじてタンジーを引き寄せ、ルルたちの方向へ飛ばしたが、彼が居た場所は地面が大きく抉れている。
こりゃ……結構ヤバいな。
タンジーと話をさせるつもりだったのだが、どうやら先に俺の出番らしい。
「問答無用ってやつじゃな。あ奴を救う手立ては考えてあるのかの?」
「とりあえず、話を聞ける状態にしなきゃいけないだろうなぁ」
「大丈夫? ゲンちゃん」
「時間もないし、やるだけやってみるしかない。それでダメだったら……その時考えるか」
ケロちゃんは、ヒントはくれどもこの状況の解決策までは持っていなかった。
最初に提案されたことは、当然タンジーを殺す事だったからだ。そのうえで、完成したこの世界から逃げ出すのが一番の近道。だけどそれは、多分最悪の選択肢だ。
「やはり、タンジーを殺して、この世界を終わらせて逃げてしまうのが一番だと思うのじゃー」
「それじゃ、今度は誰かさんが鬼になって許してくれないんだよ」
ケロちゃんは、戦闘中だというのに俺の肩に乗ったままだ。降りる気はないらしいが、知らんぞ。気づいたら潰れてたとか勘弁してくれよ。
……今から、本気出すからな!
「魔素を寄越せ虫共」
「ひょほっ! なんじゃなんじゃ! 面白い事やってるのー! お主、本当に愉快なのじゃ!」
ボイズと戦うために、虫共を蠢かせればケロちゃんが興奮したように笑った。目が漫画みたいにキラキラしてんぞ。なんだ、何したのか理解したのか?
「面白い魔素の流れをしておると思ったら、寄生虫を飼っておるなんて面白すぎるのじゃ! 何でお主、生きておるのじゃ?」
「マナサキス……? 知らんけど、なんか色々あって共生って奴になっちゃったんだよ」
森で寄生された寄生虫。便所神様だよ。
多分、転生に巻き込まれてそのまま住み着かれちゃったみたいなんだよな。ルルですら知らなかったみたいだけど。
なんで生きてるなんて、哲学的な質問されてもわかんねぇよ。そうだな、この世界を楽しむためかな?
「ダアアアアアア!!!」
「おせぇ!!」
「グガッ」
魔素を食らった俺のスピード舐めてんじゃねぇ。
いやー、一回こういうのやってみたかったんだよな。
「な……あのスピードに反応した!? あいつ、どこまで実力を隠してたんだ!?」
デグー達が、もうわけがわからないとばかりに悲鳴のような奇声を上げる。
まだだ、まだ驚くのは早いさ。
俺は拳を握りしめ、まるで地面を滑るかのようなスピードで迫るボイズの顎を蹴り上げる。
そのまま空中に浮いたボイズの体を、拳で打ち抜けばボイズの体は大きく吹き飛んだ。
「おぉ!!」
……残念。その歓声はまだ早いみたいだ。
「フシュッ! シュ!?」
その先で、とげぞうが針を飛ばし追い打ちをするが針は弾かれてしまったようだ。
「……かたい。お前、遊んでるだろ?」
「ブホッ」
地面に転がるボイズに向かって声を掛ければ、奴は寝転がったまま胸を大きく上下させた。
こいつ、笑いやがったな。
「ゲンちゃん、魔素が膨れ上がってるわ」
「わかってる。気を付けろよルル。こっからが本番らしいぞ」
ボイズの髪の毛が、まるで生き物のように逆立っていく。それらがうねり、束ねられ、形を作っていった。
「羽根……じゃのう」
「羽根……だなぁ」
おい待て、流石にそれは反則なんじゃねぇかな?
ボイズは、植物のような見た目をしているくせに優雅に空へと浮かび上がっていた。
「う……うわぁぁぁ! 赤目だ!!」
「嫌ーー!」
後ろを見れば、デグーたちの方には目の赤く染まった藁人形達が迫っている。
どうやら、本気で俺達を殺しに来たようだ。
短くてすみません。
ちょっとスランプです。
頭がぼやーっとしてうまくはたらかんのです。