0話。いつかどこかの、別のお話
2021.1
大改稿中
199X年、T県。
とある神社の修繕作業中、古い箱に入った一冊の本が発見され話題となった。
本はボロボロでかなり古く、当初は神社が建てられたのと同じ約千年前に書かれた物ではないかと噂された。
だが、結局それがいつの時代のものか、著者が誰なのかなど、詳細が発表されることはなかった。
その本の内容があまりにも奇抜で突拍子もない内容だったため、古い紙を使って最近書かれた偽物だと、時の学者たちが断定してしまったのだ。
いかなる年代測定法を行っても、書かれた時代を特定することが出来なかったということも、その結論を出す一つの要因だったとも言われている。
数年もすると、世間はその本の存在を忘れ去ってしまった。
本の名前は、「裏ノ島」
発見当初、日本最古の創作物語発見か? と騒がれた一冊である。
この世の裏側にあるとされる世界を舞台とし、主人公が海底王国へ流れ着く所から始まるその冒険譚には、龍や巨人、人魚や妖精など古今東西の神話や伝説に出てくる生き物たちに酷似した挿絵が、数多く描かれていた。
その本の1頁目にはこう綴られている。
「私は、神の地を見た」
2014年現在、未だ人類はこの本の価値を知らない。