表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したけど恋が出来ない  作者: Kei
転生初期、幼少期無自覚編
6/20

エルシュタインの決意

私の前で嬉しそうに焼きたてクッキーを頬張るアルフレイド。

「やっぱクッキーはやきたてがおいしいよな!」

「うん、ぼくもやきたてのクッキーだいすき」

こんなに純粋な笑顔を17歳のアルフレイドは無くしちゃうらしい。


私の記憶にいる17歳のアルフレイドの冷たくて怖い顔。

そんなの嫌だ。

身体は5歳でも、記憶のおかげで知識や精神年齢が大幅に変わった私。

私ならきっとアルフレイドを守りきる事ができるはず。


私はアルフレイドの友達で、随身だから、怖い事全部からアルフレイドを守ってあげるんだ。

だって私は使命なんか関係なく、アルフレイドの笑顔が大好きなんだから。


アルフレイドが誘拐されるのはアルフレイドが6歳の時。

設定資料に書かれていた通りなら第1王子の生誕祭の準備の慌しさにかこつけた犯人が城内に入り中庭で遊んでいたアルフレイドを誘拐する。

という事はあと1年の間にアルフレイドを守れるようにならなくちゃいけない。

……どうしたらアルフレイドを守れるかな?


「エルシュタイン、どうかしたのか?」

思案顔になっていたみたいで、アルフレイドは不安そうに私を見た。

「うーんとね、つよくなるにはどうしたらいいのかなっておもってた」

「つよくなりたいのか?」


いつも強くなりたいと言って無茶をするアルフレイドを宥めている私の意外な言葉に、アルフレイドの目がきらきらと光った。

これで素直に頷いたら、絶対にアルフレイドが無茶をするのが分かる。

うっかりしてた。

「えっと、つよくなりたいというか、そう、きちんとしたほうほうがわかればきょうみたいに、ぼくのあたまのうえにオレンジがおちてくることはなくなるかなっておもって」

「うぐっ…わるかったなあ!」

すでに立ち直ったアルフレイドはさっきの事を言っても悲しんだり気に病んだりはしない。

ちょっと反省するだけだ。


「おとなは、ぼくたちにはあぶないからまだいろいろはや()いっていうけど、きちんとおしえてもらったほうが、ぼくの()のあんぜんはかくほ(確保)されるとおもうんだよね」

もしかして週2回の随身教育…もといお勉強会に当主だけでなく兄様姉様の誰かが代わる代わる来ていたのは、私の成長を確かめていたんじゃなくただ単に関わりたかっただけだった…のかな?

「わるかったっていってるだろー…」

「でもまたするでしょ?」

「むむう…」


そう、いつもいつもアルフレイドはこうだ。

ちょっと反省しても全然懲りない。

魔法は今日が初めてだったけど、いつも強くなるためだなんて言って無茶をする。

第1王子のスアリエル様と第2王子のテオスギフト様が剣や体術、魔法の扱いに長けているのを知ってからは余計に。


歳の差を気にしているのは分かるけど、その歳の差分御2人が強い理由を納得して欲しい。


前に

『スアリエルさまとテオスギフトさまがつよいのは、アルフレイドよりとしうえだからなんだよ? だからいまのアルフレイドがおふたりに()つんじゃなくて、いまのおふたりとおないどしになったときにいまのおふたりよりつよくなることをもくひょうにしようよ』

と言ったときのアルフレイドの返事は、

『おれはアリックにいさまとテオにいさまにはやくおいつきたいんだよ!』

だった。

一生懸命考えて最高の説得だと思ったのに、全く意味が無かったからあの時はすごいショックだったなぁ…。

今の私だから思うけど、この歳でこんな説得を思いついたのはすごいと思う。

自画自賛したい訳じゃなくて、素直にそう思った。


「でも、レーマスもギルもおしえてくれないのに、どうするんだ?」

レーマスさんとギルハルトさんは、スアリエル様とテオスギフト様の指南をしている騎士と魔術師の1人。

全然手足が伸びてない子どもに武術を教えてくれる人がいるはず無いし、魔力が発達未満制御不能の子どもに魔法を教えてくれる人も絶対にいない。

それがアルフレイドには不満らしいけど、当たり前なんだから仕方ない。

「かんがえたけどむりだからあきらめよう。 きょうはオレンジだったからだいじょうぶだったけど、あれがはちう(鉢植)えやおきものだったら、しんじゃうかもしれないんだよ。 ばしょをえらべばだいじょうぶっておもうかもしれないけど、アルフレイドのちからがぼうそうしたらとおくからでもおもいものをはこんじゃうかもしれない。 かぜじゃなくて()だったりすれば、おおけがしちゃうかもしれない。 アルフレイドはおうぞく(王族)だから、ぜったいすごいちからをもってるんだ。 まほういがいならぼくがとめることができるからいいけど、もうまほうはつかわないでね」

だからアルフレイドには今すぐ強くなる事は諦めてもらうしかない。

「……あしたはきのぼ(木登)りのとっくんだからな!」

…うん、魔法を諦めてくれただけ良しとしよう。


アルフレイドが強くなるのは、きちんとした順序を経て成るべきだ。

でも私は違う。

ルーテルベルク家は代々特殊な教育を駆使し王家の随身を輩出はいしゅつしてきた。

今現在3歳で随身として生まれたばかりの王子に付くなどという常軌を逸した事が出来るのもその積み重ねがあったからこそ。


私自身が望めば、母も反対はせずに当主の元で教育を受ける許可をくれるはず。

当主も時期当主に改めて教育現場を見せる事ができるのだから、きっと拒否はしない。

昔ほんの少しだけ受けた教育は酷く辛いものだった。

今では週2回、2時間ずつ程度当主直々に様々な事を教わるが、それの比にはならない程厳しくなるだろう。

だけど私自身が望む程度になる為にはそれ以上、想像も付かないほど辛く苦しい思いが必要だと思う。


私はアルフレイドを守る為ならきっと、どんな事でも耐えられるから。

アルフレイドの笑顔は、私が守ってみせる…絶対に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ