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転生したけど恋が出来ない  作者: Kei
プロローグ兼モノローグ エルシュタイン10歳
2/20

ぼくと私とアルフレイド

転生した先が乙女ゲームの世界だった。


それは私がよく読んでいた女性向け転生ものの王道パターンだ。


そして転生体は主人公、ライバル、主要人物の身内、果てはモブなど。

そして物語の内容は逆ハーレムを目指す、好きなキャラと結ばれようと奮闘する、もしくは死なないためにフラグを折ろうとしたら逆ハーレム、普通に生きようとして逆ハーレムなどが主な内容だった。


だがしかし。

私は転生したもののその中のどれにも当てはまらなかった。

何故なら私は…


「エルシュタイン! だいじょーぶか!?」


攻略キャラというものに転生していたから。




記憶を取り戻したのは5歳の時。

庭で幼なじみのアルフレイドと遊んでいた私は、見様みよう見真似みまねでアルフレイドが発動させた風魔法によって落ちてきたオレンジが頭に直撃し軽い脳震盪を起こした。


その拍子に前世の記憶が流れ込み、この世界が乙女ゲーム『学園聖女 Night&Knight』の世界だと理解した私は、転生の事を抜きにしても衝撃を受ける。

何故なら目の前にいたアルフレイドが私が作中で1番好きな攻略対象だと思い出し、そして私自身がファンからの人気投票で見事1位を獲得した、エルシュタイン・ルーテルバークだという事に気付いてしまったから。


何故私が男なのか。


その衝撃に呆然ぼうぜんとなった私に涙目で声を掛け続けるアルフレイド。

転生前の私が知るアルフレイドは17歳で学園の生徒会長をしている姿だけだった。


何故かというと主人公がアルフレイドに出会う機会が学園に入るまで無かったからだ。

つまり私は本来なら決して見る事のできなかったアルフレイドの姿を目にしたのだ。


男になってしまった衝撃と、幼いアルフレイドの涙。

私が優先したのはアルフレイドだった。


無論、転生の記憶が無い私であっても優先すべきはアルフレイドだ。

アルフレイドが友人としての私を必要としたから名を呼び隣に立つ事になったが、本来なら私はアルフレイドの隋身ずいしん

常にアルフレイドの事を考えて行動せねばならないのが当然。


「ぼくはだいじょうぶだよアルフレイド。 すこうしびっくりしただけだから」

「ひっ…う、ほんとうか?」

「うん。 だからないちゃだめだよ? アルフレイドはとってもつよいんだから」

「おれは泣いてないっ!」

「そろそろおへやにかえろう? いいにおいがするからおやつができてるかも」

「ん! そうだな行くぞエルシュタイン!」

私は子どもの単純さに苦笑し、ぼくはアルフレイドの素直さに微笑んだ。


今でもあの日の事は鮮明せんめい脳裏のうりに思いえがく事ができる。 ぼくが初めて見たアルフレイドの魔法と、私が初めて出会ったアルフレイドの事を。




当時、ぼくと私は反発無く意識が融合ゆうごうした。

あれから早5年。

私の主人格はエルシュタイン•ルーテルバーク。

私がするべきはアルフレイドが成人するまで隣に立ち、彼を導く良き友となる事。


しかしとある出来事が切欠きっかけとなり融合の結果私は自分の内面の性が変わってしまっていた事に気付いた。

それと同時に自身を騙せないほどに成長していた気持ちにも…。


私はアルフレイドを愛してしまったと。



幼い頃は憧れのアルフレイドの幼少期を見られ、かたわらに居る事を許されただけで満足だったのに、いつの間にか私はゲームのアルフレイドではない生身のアルフレイドに例えようもない劣情を抱いていたのだ。

自覚してからはアルフレイドの隣に立ちながらアルフレイドが微笑みかける淑女に嫉妬を覚え、アルフレイドが手を差し伸べる淑女に憎悪を抱いた。


何故私は男なのか。


常に隣にいるのにアルフレイドに触れる事も、その腕に抱かれる事も、頬に口付けを受ける事も無い。

距離は近いはずなのにアルフレイドは酷く遠い人だと気付いた。


私がただのエルシュタインならこんな気持ちを抱く事は無かった。

だがただのエルシュタインでは回避できなかったアルフレイドにおよぶ危険も数多あまた存在したのも事実。


前世の記憶はアルフレイドを守り、私を深く傷付ける両刃の剣だったのだ。

だが私は事前にそれを知ったとしてもこの剣を抜いただろう。

何故なら私が優先すべきはアルフレイド。

この国の第3王子であるアルフレイド•リスタート•ルナフォーレの随身として、成人するまでアルフレイドを守る事が、私の使命なのだから。

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