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……あんなことをしてしまったから、クビだろうと響はうつむく。
騒ぎのあと、その場を預かるチーフから「とりあえず今日は帰ってくれ」と言われて響は早上がりになった。
自転車を引き、とぼとぼと辿る家路。
夕陽はいやに眩しく、綺麗だった。
バイトはクビになっても、べつに良い。
せっかく慣れてきたところだったけれど、仕方がない。
ほかの仕事を探せばいいことだ。
だが、蜜美のことにはかなり驚いた。
蜜美とはたくさんの時間を過ごしたわけでもないし、会話するわけでもないが、家での様子は同級生に虐められているようにはまったく見えない。
寝耳に水。まさかの出来事だった。
(金とか脱がすとか……)
衝撃を味わいながら家に着く。
ちょうど母親も、パートから帰ってきたばかりのようだ。
「あら、今日は早いのね」
響は言葉を濁しつつ「う、うん」と頷き、自室に行く。ドアを閉じた瞬間、どっと脱力感と疲労感に襲われる。
(正しかった……よな? 俺のしたことは……)
気づけばあの学生たちに向かっていた。
見過ごすことなどできなかった。
「なんなんだよ……いったい」
ベッドに腰かけたが、落ち着かない。
カフェのバイトがどうなるかもわからないし、蜜美のことも気になる。
そわそわした響が手を伸ばしたのはアコースティックギター。
ステージではエレキギターしか持たないけれど、家で弾くときや、作曲をするときはアコギを使うことも多い。
久しぶりに膝のうえに置いてみると、埃など汚れが目立った。
まずはそれを、拭いてやるところから響ははじめる。