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(遅刻するうぅううう)

 バイト先までは自転車で十五分。

 それを立ちこぎでかっ飛ばし、あり得ないほどの速度で駆け抜ける。

 駅前商店街の一角にある小洒落たカフェ『リリィ・マドンナ』

 いつもの通勤時間の半分たらず、七分で到着すると響は裏口から更衣室に入った。

 呼吸いきを切らしてタイムカードを押せば、機械音とともに印字される、15時27分の刻印。

 時刻を確認し、心底ほっとする。

 響は黒いコートの胸を撫でおろした。

(ぜってー遅刻すると思った……)

 ロッカーを開け、ヴィヴィアンウエストウッドのマフラーをはずす。

 着替えるのはウェイターの制服。

 シャツに黒のスラックス、三つボタンのベストに蝶ネクタイ。庶民的な価格設定に似合わず高級店ふうの装いだった。

 オーナーの英国好きを反映した店内のインテリアに、この制服はよく映える。

 また、響にも異様なほどに似合った。バンド時代と同じ、白金プラチナに近いほど脱色した長髪にいくつものピアスという外見ゆえに。

 この姿にウエイターの装いをすれば、少女向けの漫画の登場人物のような、執事喫茶のような風貌になってしまい、若い女性客には受けがいい。

「おはようございまーす!」

 髪をひとつに結んでから、更衣室と繋がっている厨房に入った。

 バイト仲間がそれぞれ、挨拶を返してくれる。彼らも響と同じ制服なのに、執事喫茶にも乙女向け漫画にも見えない。

 客席は午後のお茶を楽しむ主婦グループや年配の夫婦などで埋まっていた。

 いつもかわらない『リリィ・マドンナ』の光景。のどかな日常だ。

 バンドマンだった頃の華やかさはない日々だけれど、こんな毎日にほっとする現在いまの自分を響は見つけていた。

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