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 その夜遅くだった、蜜美自身が響の部屋に出向いてきてくれたのは。

 あの夜以来の、驚くべき来訪だ。

 ラフなスウェットに着替えていた響は、パジャマ姿の蜜美を迎える。

 となりあってベッドに腰かけながら、蜜美の告白を聞いた。

 さきほどの車は、半年ほどまえに街で声をかけられたのをきっかけに、遊んだりする関係になった男性だという。

 こんなことははじめてでなく、子どものころからよくあることだったらしい。

 繁華街を歩いていると、男からも女からも誘われる。応じれば、小遣いをもらえることもあるそうだ。

 それで蜜美は高額な金を、親に内緒で持ち歩いている。

 蜜美の容姿ならばあり得ることだったが、語られる話に、響は驚きを隠しえない。

 とつとつとした口調で他人事のように話すから、余計に現実味がなく、呆然としてしまうのだった。

「軽蔑した?」

 ひととおり話し終えたあとで、蜜美は言った。響は首を横に振る。

「いや。俺も学生の頃、すげー遊んでたし。蜜美ほどツラ良くねえから、ナンパされるってことはないけど。全然家に帰ってなかったぜ」

「そうなんだ……」

 返事をする蜜美は、どこかほっとしたようにも見えた。

 ひょっとしたら、本当はずっとこのことをだれかに話したかったのかもしれない。

「俺はさみしかったんだと思う。母ちゃんは忙しそうにしてるから、甘えにくかった。子どもながら、負担になりたくねえってすげえ思ってたよ」

 それでさみしさを紛らわすために遊び回るようになり、家に帰らなくなって心配ばかりさせていたのは本末転倒だと思う。

 成人してからは猛反省の日々で、響なりに母親を気遣って暮らしている。

 母からすれば、決まったバイトに行っているだけでも安心するらしい。

 心配させないハードルが低すぎて、我ながら情けなくもあるけれど。

「蜜美もさ。親父さんと二人暮らしのときはさみしかったとだろうけど、いまはちがうだろ? さみしさは感じなくていい。俺がいるしなっ」

「…………」

 響の言葉に、蜜美はもぞもぞと身を揺らした。

 どうやら照れているらしい。

 恥ずかしそうな顔をして、袖のなかに手をひっこめている。

 そんな動作が可愛くて、響は微笑う。

 蜜美の肩を抱き寄せた。

 蜜美がついていった不特定多数の大人たちは、きっとこんなこともしていただろう。

 それで安堵が得られるというのなら、大人たちの代わりになりたい。

 蜜美自身を安売りしてほしくなかった。

「もっと自分を大事にしろ。いままでは運がよかったかもしれねーけど、ついていった人がもし変なヤツだったら……蜜美は俺よりも賢いから、わかるだろ?」 

「……」

「俺が代わりになる。ついでに言えば、車の免許だって持ってるぜ」

「うん……」

 蜜美も響に寄りかかってくれた。

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