17
その夜遅くだった、蜜美自身が響の部屋に出向いてきてくれたのは。
あの夜以来の、驚くべき来訪だ。
ラフなスウェットに着替えていた響は、パジャマ姿の蜜美を迎える。
となりあってベッドに腰かけながら、蜜美の告白を聞いた。
さきほどの車は、半年ほどまえに街で声をかけられたのをきっかけに、遊んだりする関係になった男性だという。
こんなことははじめてでなく、子どものころからよくあることだったらしい。
繁華街を歩いていると、男からも女からも誘われる。応じれば、小遣いをもらえることもあるそうだ。
それで蜜美は高額な金を、親に内緒で持ち歩いている。
蜜美の容姿ならばあり得ることだったが、語られる話に、響は驚きを隠しえない。
とつとつとした口調で他人事のように話すから、余計に現実味がなく、呆然としてしまうのだった。
「軽蔑した?」
ひととおり話し終えたあとで、蜜美は言った。響は首を横に振る。
「いや。俺も学生の頃、すげー遊んでたし。蜜美ほどツラ良くねえから、ナンパされるってことはないけど。全然家に帰ってなかったぜ」
「そうなんだ……」
返事をする蜜美は、どこかほっとしたようにも見えた。
ひょっとしたら、本当はずっとこのことをだれかに話したかったのかもしれない。
「俺はさみしかったんだと思う。母ちゃんは忙しそうにしてるから、甘えにくかった。子どもながら、負担になりたくねえってすげえ思ってたよ」
それでさみしさを紛らわすために遊び回るようになり、家に帰らなくなって心配ばかりさせていたのは本末転倒だと思う。
成人してからは猛反省の日々で、響なりに母親を気遣って暮らしている。
母からすれば、決まったバイトに行っているだけでも安心するらしい。
心配させないハードルが低すぎて、我ながら情けなくもあるけれど。
「蜜美もさ。親父さんと二人暮らしのときはさみしかったとだろうけど、いまはちがうだろ? さみしさは感じなくていい。俺がいるしなっ」
「…………」
響の言葉に、蜜美はもぞもぞと身を揺らした。
どうやら照れているらしい。
恥ずかしそうな顔をして、袖のなかに手をひっこめている。
そんな動作が可愛くて、響は微笑う。
蜜美の肩を抱き寄せた。
蜜美がついていった不特定多数の大人たちは、きっとこんなこともしていただろう。
それで安堵が得られるというのなら、大人たちの代わりになりたい。
蜜美自身を安売りしてほしくなかった。
「もっと自分を大事にしろ。いままでは運がよかったかもしれねーけど、ついていった人がもし変なヤツだったら……蜜美は俺よりも賢いから、わかるだろ?」
「……」
「俺が代わりになる。ついでに言えば、車の免許だって持ってるぜ」
「うん……」
蜜美も響に寄りかかってくれた。




