エ ピ ロ ー グ
―――今日も暑いな……
いつもの通学路。早朝だというのに、太陽がジリジリと身体を照らす。
……蝉の声が耳障りだ。
僕はミドリと一緒にゆっくりと道を歩く。
「よっ!」
後ろから肩を叩かれ、空気のように軽く挨拶をされた……南川だ。
僕は振り返ると、いつも通りの朝とは少し違っていた。
「えっ? ……南川、黒子の面どうしたの?」
「ん? ああ、今日は特別な日だからよぉ! イケメンが出せる! すげえだろ!」
相変わらず話が飛躍しすぎだ……南川は黒子の面をかぶっていない。
事情を聞き出す為には、時間が要すると判断し、僕は藤宮を待つことにした。
「ミドリっち! おはだぜー! 今日もあっちぃなあ!うん、今日も安定した丸さだぜ」
〈南川、おはよ。顔、見えてる〉
「おうおう! オットコ前だろぉ? ヒヒヒヒ!」
南川の不快な笑い声を聞きながら、僕は苦笑する。すると前方から、
「やっほーい! ミドリたん! ミドリたん!」
駆けてきた少女はミドリに飛びつく……藤宮だ。藤宮も黒子の面をかぶってない。
「あー、つめた~い!気持ちいいっ!」
〈優子、おはよ。顔、見えてる。いいの?〉
「いいの、いいの! 今日は特別な日だしさ! 無礼講なんじゃよ!」
「ねえ、藤宮。なんで黒子の面かぶってないの?」
「あ……バカ二人いたの? 片山、どうせ忘れてんでしょ? 教えてあーげない!」
「なんだよ……いいよ、もう」
僕はふくれっ面をし、ハンカチで額の汗を拭った。
〈優斗、抱きつくか〉
「あ、大丈夫。ミドリ、ありがとう」
正直ミドリに抱きつきたいけど、藤宮がミドリに張り付いている。
二人で抱きついたら変だしね……。
登校途中、他の生徒たちは黒子の面をかぶっている。
一体何なんだ……特別な日って……。
「んじゃ、ミドリたん、片山、まったねー!」
「俺も行くわ。じゃな、優斗」
校舎を走っていく二人を見て、僕はため息をついた。
……まあ、いいか。早く司令室へ行こう。冷房の効いた部屋でゆっくりしたいね。
司令室に着き、優斗はいつものようにドアノブを回した。
……あれ?なんで?……ガチャガチャと何度も回すも開く気配がない。
「ねえ! 開けてよ! ねえ!」
部屋からの返事はない。ふと、壁の手書きであろう、矢印に気づく。
……なんだ? 矢印に沿って行けっての?
〈優斗、矢印、行くか?〉
「そうだね……司令室には入れないし、行ってみようか」
矢印に沿って廊下や階段を歩いていく。すると、見慣れないドアの前にたどり着いた。
また、クロの仕業かな……勘弁してよ。
そっとドアを開けると―――
「「「「ハッピーバースディ!!片山優斗!!」」」」
パパパパンとクラッカーが同時に鳴り、僕は唖然とし頭の中が真っ白になる。
「グハハハハ、優斗よ! 14歳の誕生日、めでたいのう!」
「……クロ! 一体何なのさ! 南川! 藤宮まで……!」
ドアの先は屋上で日差しが暑く、開放的な空間にDM軍が揃い、全員ニコニコと笑っていた。机の上には豪華そうな料理が沢山列んでいる。
「何言っとるんな。今日はお前の誕生日じゃろうが。8月8日は!」
「えっ? 僕の誕生日? そうなの?」
「うむ、今日は世界規模で、片山優斗、誕生記念祭が行われておる! 感謝せえ!」
―――なんだって!?
そこからが凄かった―――黒子軍の吹奏楽団演奏、イカロス空中の舞や、テレビ中継が入り、各国の著名人、有名人(総理や大統領含む)がお祝いしてくれるなど、まさに僕にとって地獄絵図だった。
一日中ひきつった笑顔を強いられ、日が暮れてもお祭りは続いていた。
「よし! オペ子! ダモスウェルを出せ!」
「了解。学校、隔壁開きます」
学校が割れ、ダモスウェルが出現すると、クリスマス仕様の装飾が施されており、辺りはきらびやかなムードになる。
「おっしゃー!超連射花火を上げよ!」
「了解。花火打ち上げます」
ものすごい轟音。夜空には綺麗な花火が彩れる。それが二時間ほど続いた。
終了―――午後8時、さすがに帰りたくなってきた。
「クロ……みんな、今日はありがとう。とても楽しかった。そろそろお開きにしない?」
クロはおどけた顔をすると「何言いよるんな。日付が変わるまでやるで?」と答えた。
「もう十分だよ……そうだクロ、今から二人でブンドドでもしない?」
「ふむ……それではしょうがないの。祭りは終わりじゃ! DM軍、解散じゃあ!」
―――司令室で二人で遊ぶ。
「ぬりゃあ!これが超必殺技!シャオリュウケンじゃああああ!」
「うわっ! クロ! そんな事したら壊れるだろ!?」
ガツン、ガツンと玩具をぶつけてくる。
そして―――僕は話を切り出した。
「ねえ、クロ……結局さ、4年しか進まなかったね」
「なんや…自分の誕生日忘れとるのに、そんな事覚えとるんか」
「うん、ぼんやりとね……あっ!ほら!壊れちゃったじゃないか!」
僕は片腕が壊れた玩具をクロに見せつけた。
「なあに、壊れたもんは直せばええんじゃ」
クロは玩具を手に取ると、満足気な顔をして言った―――
最後まで見ていただいた方感謝します。いかがだったでしょうか?
面白くなかったらごめんなさい。もっと精進して頑張っていきます。どうも、最後までお付き合いありがとうございました。




