第十話 最 終 兵 器 ミ ド リ
―――学校司令室。
「優斗司令! 大変です! キイさんの暗黒エネルギーが大幅に減少してます!」
「え……?暗黒エネルギーってなに?」
「人体の生命エネルギーみたいなものです!」
「それって……まずいじゃないか! キイを下がらせて!」
「……キイさんから連絡が入りました! 目標の口を封じたようです! 第五次衝撃波は防げたと予測されます。キイさんは……最後まで戦うそうです」
「だめだよ! そんなんじゃだめだ!!」
バンッと優斗は機械を叩くが、ミサイルの砲声でかき消される。
「オペ子…ミドリ、どうしてるかな……」
「こんな時に?ミドリの心配ですか!優斗司令!……あっ、お待ちください……」
オペ子は何か気づいたように、通信機で話している。
「……なんですって!ミドリは二時間前にロールアウトしてた!? なぜ連絡してくれなかったんですか! え? 気絶してた?ふざけないでください!いますぐ、出撃スタンバイして下さい!」
オペ子は、金切り声を上げると通信機を切った。うつむき加減で肩を落としている。
「優斗さん……すみませんでした…私……」
「オ、ペ、子、隙ありっ!」
優斗はオペ子に近寄り、パッと黒子の顔布を上げた。
「わ、わわわ、なんてことをするんですか!もう、お嫁にいけませんっ!」
「それだけ美人なんだからさ、絶対にお嫁にいけるよ!」
「もうっ! ……ミドリ、司令部に到着しました!」
もくもくと煙が充満し、目が赤いミドリが出現する。
「優斗さん、ミドリは戦闘モードになってます。絶対に近寄らないでください」
「大丈夫だよ。ねっ?ミドリ?」
優斗はミドリに近づくと優しく抱擁をした。
〈……ゆっくりしていってね! 出撃まで八秒前……優斗、はなれて〉
「ミドリ、がんばって!危なくなったらすぐに帰ってきて!」
〈だいじょうぶ……また、遊んで……〉
ミドリは足から煙を出すと、窓からロケットのように空中へと飛び立った。
「現在ミドリは目標の三百メートル前で静止しています。……えっ…これは……暗黒エネルギーがミドリを包み込んでいます!レーザー兵器か自爆の可能性大、危険です!」
「オペ子! 全軍に連絡して! 全員、早く遠くへ逃げてって!」
「了解。全DM軍に告ぐ!全員、すみやかに退避せよ。司令の判断である。キイも退避せよ。繰り返す……」
……空中を下降したキイは、†デス◇ヒヨコ†へと突進し、レーザーソードで切りつける。ギュンと旋回し、目標の背後で止まると、キイの身体が悲鳴を上げた。
「くっ…この程度で……放送?なんだとっ! どういうことだ! ……あれは…ミドリか? よし! 黒子軍! 撤退するぞ!!」
ミドリは†デス◇ヒヨコ†と対峙し、睨み合いとなった。
「いけません! 暗黒エネルギーが集中しすぎて、このままではオーバーロードを起こし、自滅してしまいます!」
「オペ子……大丈夫だよ。ミドリならさ」
「ふんっ!片山優斗にしては、いい判断だな」
司令室の窓からキイが顔を出す。
「キイ! 大丈夫?」
「キサマに心配されるとはな……。ワタシは少し休む」
ボロボロの兵器を纏ったキイは、空中へと飛び去った。
―――上空では、睨み合いが続いている。
そして―――勝負は一瞬でついた。
ビシュン!と、ミドリの口から光線が斜め四十五度に放たれ、目標の胴体を光線が貫き、爆音と共に†デス◇ヒヨコ†は街へと沈んでいく。
「目標、完全に沈黙! 目標が街へと落下していきます! このままでは!」
「ミドリと回線を繋げて! ……ミドリ! 敵を海まで押し出して! お願い!」
〈優斗……だいじょうぶ……〉
ミドリはギューンと直線に目標に飛びつき、敵を抱え海上へと押し出す。
「優斗司令! 敵、街への落下、回避しました! ミドリを帰還させます。……? ミドリの暗黒エネルギーさらに増大!」
敵が海上へと落ちる瞬間、ミドリの目が光りシュバババババババ!と拡散された光線が†デス◇ヒヨコ†を焼き尽くす。粉々になった破片は海へと沈んでいった。
「はあ~、ミドリ…無事だ…良かったあ……」
優斗はへなへなとその場に座り込んだ。
「敵、完全に消滅。ミドリ、帰還します。DM軍、謎の敵に勝利しました!」
ズシン!と鈍い音を立て、ミドリは司令室へ着陸した。
「ミドリ、大丈夫だった? 怪我してない?」
〈だ……いじょ、う……ぶ……ゆっ……くり、して……ガガガガガ、ピー〉
「わっ! オペ子! ミドリが壊れちゃった! どうしよう!」
「至急、技術開発へ回します。これでは…当分の間、ミドリは使えませんね……」
緊迫が安堵に変わった頃、エレベーターからひょこりとクロが現れた。
「うむ? これはもしや……! 大勝利ってやつかの? ヒャッハー! 大勝利! 大勝利!」
……僕たちは、クロのはしゃぐ姿を見て殺気を覚える。
「オペ子! どうな? 大勝利なんじゃろ?」
「……あなた、誰ですか?優斗司令、知ってますか?」
「僕、こんな人知らない」
「了解しました。黒子部隊に告ぐ。司令室に不審者。直ちに排除して下さい」
―――その後、僕はシェルターに行き、家族と由美ちゃんの無事を確認した。
家が壊れ、帰る事も出来ず、シェルターに泊まる事となったのだが……。
次の日の朝、街は何事もなかったように元通りに復元されていた。
学校へ登校すると、オペ子の前でクロは泣きながら土下座。僕は苦笑いをする。
「ワシが悪かったけえ!堪忍してや!仕方なかったんよ……なんや、優斗?どうやって街を元通りにしたとな? ……なあに、壊れたもんは直せばええんよ」




