8.
そしてクコリは今、捜した人と向き合っていた。
窓を挟んで。
壁を登ったはいいけれど、さてどのように屋内に入ろうかと考え、クコリはとりあえず目についた窓に向かった。月を挟んだ位置だから、それはつまり北向きの窓で、まさかそんな居心地の悪い部屋に誰かがいるだなんて思っていなかった。
ましてやその誰かは、古典的な逃亡の手段に見える、縛って長さを稼いだ布をたくさん持っていた。これは、多分、カーテンだとかそういったものだとクコリは思った。
そしてもうひとつ。その誰かは、クコリが先ほどまで思い返していたひとによく似ていた。
「‥‥あんた、シクリ?」
お互いに固まっていても仕方がないので、気を取り直してクコリは窓越しに声をかけた。
多分、この誰かは、女隊長の姉妹のどちらかだろう。他人というには似ているし、この屋敷に2人の姉妹以外の血族がいるとは聞いていないから。
「‥‥惜しい。私はシザリだけど‥‥お前は何?小姉の友達か何か?」
間違ってはいたものの名前を口にしただけで女隊長とのつながりを意味するとは思わなかった。
「姉妹って、妹だったのか。もう一人は、たいちょーが小姉ってことは、姉?」
「‥‥知らなかったのか。そうだよ。シクリは大姉の名前だよ」
とりあえず幸先はいいと言えるのだろうか。壁にへばりついているのも疲れるので、シザリに窓の鍵を開けさせて侵入しようとしたら、彼女はそれを制した。
「‥‥これ結構大変なんだけど」
文句を言えば、開けた窓から逆にシザリが身体を乗り出した。
「‥‥見れば分かる。
大方、小姉に言われて連れ出しに来てくれたんでしょ。だったら中に入っても仕方がない」
吐き捨てるように言って、一旦引っ込むと、シザリは次に、持っていた布の塊を外に放り出した。端はどうやってか中に固定してあるらしく、思った通りだらりと、縛り目のついたカーテンが垂れ下がった。
姉妹と言ったって、そんな、痛みを堪えるような表情までそっくりじゃなくてもいいのにと思いながら少し横にずれ、クコリはシザリを仰ぎ見た。
「仕方がないって言ったって‥‥もう一人は?」
半ば予想していたけれど、痛む笑顔でシザリは言い放った。
「死んだ」




