6.
「‥‥馬鹿らしい?」
思わず問うと、女隊長はそのまま苦く微笑って見せた。
「えぇ。馬鹿らしいですよ。
ただ私は他人より他人を殺すのがうまいだけです。それも隙を突くような殺し方がうまいだけ。
国王の阿呆はそれに目を付けて、本当にどうして目を付けられたりしたんだか、登用というよりだまされて隊長になったんですよね」
冷めた、というより据わった眼で、口元だけを歪めて女隊長は言った。
「あと何でしたっけ。あぁ、家ね。
屋敷と言っても、あれはあの阿呆どもに都合のいい牢獄ですよ。姉妹の面倒を見てくださっているそうですけどね。必要もないのに使用人なんてものまでいてね。でもその実、私を縛り付けるために、姉妹が囚われているんです。体のいい人質ってやつです」
「人質」
それは犯罪なんじゃないだろうか。自分がやらかすようなケチな盗みなんかよりももっと重い。
「クコリ。ひとつ、どうにもならないことを教えてあげましょうか」
どうにもならないなら教えられてもどうにもならない、と思ったが、反論はできなかった。
「偉い人たちっていうのはね、あの阿呆どもは、自分は国家だとか法だとか言い出して、どんなことでも押し通してしまうものなんですよ」
吐き捨てて、女隊長はまた酒を注いで飲み干した。
それから息を吐き、改めてクコリを正面からまともに見た。いい加減気がそぎれていたクコリだったが、急に変わった空気に背筋を伸ばした。
「‥‥そういえば、クコリ。私の名前って知っていますか」
だから、真面目な顔をして何を言うかと思ったらそんな問いを発せられて、正直ちょっとコケた。
「‥‥知らない。女隊長」
指をさして言うと、頷いて女隊長は言った。
「それじゃぁ姉妹の名も知るはずもないですよね。
ねぇ、ひとつお願いがあるんですけど」
お願いだから無理にとは言わないんですけど、と女隊長は言った。
「私は、シトリ。
シクリとシザリという、私の姉妹を、できれば連れ出してもらえませんか」
真面目な顔をしてそんなことを言うものだから、意識するより前にクコリは頷いていた。
これでようやくプロローグにつながる‥‥はず?




