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クコリの夜  作者:
19/21

18.

 女隊長の元に辿り着くのに、それから2日かかった。


 戦場だった。だが、天幕のあたりは本当の戦場からは遠かった。そもそもこちらが攻めている側で、天幕付近まで攻め返されていたら世話はない。


「戻ったよ」


 いつかとは逆、天幕に入ろうと布を持ち上げた女隊長の背中に向かって、簡単にクコリは声をかけた。


「‥‥ありがとう」


 中に入りませんか、と振り返りもせず言ったのに、2人は素直に従った。



「‥‥シザリ」


 久し振りですね、と女隊長は言った。


「‥‥久し振りだね、小姉(ちいねぇ)


 似た顔で、同じ無表情で、会話する姉妹をクコリは茫と眺めていた。


「シクリは‥‥」


「‥‥死んだよ」


「‥‥そう」


 姉妹が一の姉について語り合ったのは、それだけだった。


「毒は?」


「‥‥一日食べなかったら大分抜けた。そうしたら動けるようになったし、こいつも来たから逃げ出せた」


 指差されて、クコリはちょっと頷いた。


 正直なところ、ふらふらしていたシザリ1人でここまで逃げ出せたとは、クコリにも思えない。かといってクコリが凄いのだと誇るつもりもない、ただ、慣れているだけだ。


「訴えられると思う?」


「‥‥無理だろね。

 多分白の毒だとは思うけど、どこで混入されたかなんて、連中ならいくらでも偽装できるだろ。私の毒はとうに抜けているし、例え大姉(おおねぇ)の身体があったところで‥‥」


「‥‥そうですね」


 呟くと、女隊長は、つい、とシザリからクコリへ視線を移した。


「‥‥それなら逃げましょうか。

 クコリ、ありがとう」


 それだけだった。クコリもそれに当然のように頷いた。


「‥‥姉さん助けられなくてごめん」


「いいえ。おそらく、私たち、3人は自由になれなかったのですよ」


 だから、ありがとう。と、もう一度女隊長は呟いた。

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