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クコリの夜  作者:
14/21

13.

「食べれば」


 床に置いてあったパンに初めて気付いて、シザリがまじまじと見ていたので、クコリは声をかけた。


「お前は?」


「先に食べた」


 日中部屋の中に放置していたパンはちょいと変な味がしたが、そのくらいでクコリは腹など下さない。流石にそんなものを他人に食べさせるのは気が引けたので、シザリの為にはまた盗ってきた。


「そういえばご飯とか食べてなかったっけ‥‥」


 何処か呆然とパンを見つめてシザリは言った。


「だから体力ないんでしょ」


 あきれて言うと、けれどシザリは変な感じに笑った。


「いや?むしろ丸一日食べなかったから昨日は動けたんだよ」


 可笑しなことを言う。


 どういうことだと訊こうとして、何故か勇気がなくてやめてしまった。昨日物思いにふけっていた時と似ている、嫌な気分になりそうな予感がした。


「‥‥なんでもいいけど食べといて。また歩くよ、かなり」


 壁も越えるし。


 言うと、情けなさそうにシザリは眉を下げた。



「‥‥行こう」


 また少し時間を過ごし、真夜中、周りの音が大分静かになってクコリは声をかけた。かなりひそめた声は、けれど十分に聞こえた。


 羽織る以外の布は、また縛ってある。厚くて丈夫な、多分カーテンか何かだった布は多少裂いて長さを稼いだ。これだけあれば足りるのではないかな、と、自分は使わないものだから曖昧にクコリは思った。


 鍵を開けて扉を押し開く。


 夜の匂いがした。


 夜はクコリの世界だった。

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