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嫉妬で狂っちゃう

作者: 澪ナギ
掲載日:2026/08/19

 恋人に見られないのは、悔しさしかない。


「妹さんですか~?」

「仲のいいご兄妹ですね!」


 わたしを妹と思う人たちは、二人で街に出るとそうこぞって声をかけてくる。


「恋人なんで」


 大好きな恋人さまは、そう言ってくれるけど。


 大体の人は、やっぱり疑いの目。それも、悔しい。


「…身長ちっちゃいから?」

「お前がかわいいからでは?」


 理由を探してこぼした言葉に帰ってきた的外れな答えを聞いて、恋人に見えない理由を探るのはすぐにやめて。

 リアスの一歩後ろを、この人の服の裾をつかんで歩みを進めた。


 よく晴れた日曜日。デートの日。

 いっしょにお買い物行って、どっかでスイーツ食べて。いっぱいあそぼうね、って昨日まではワクワクしてた。


 でも、いざ当日になったら。


 人の多い街。声をかけてくる女性陣に。どうしても、テンションは下がっちゃう。


 とぼとぼリアスの一歩後ろを歩いていたら、また。


「あの、ご兄妹ですか?」


 こうやって、声をかけられる。無意識に、ぷくって片方のほっぺが膨らんだ。


「恋人なんで」

「えー、うそー」


 嘘じゃないもん。

 伝えるように、腕にギュッと抱き着いた。そんなわたしの頭をそっと撫でて。


「恋人が嫌がってるんで。失礼する」


 リアスは、少し早めに歩き出した。


「今日は多いな」

「…かっこいいからじゃない」

「それは知らんが」


 困るな、と。道のはずれに入って、リアスはため息。わたしも困る。せっかくのデートなのに。


 ギュッと抱き着いて、考えた。


 どうしたら、恋人っぽく見られるんだろう。身長? ヒール履けばいいかな。顔立ちは変えられないし。


「…やっぱり発育の問題…?」

「決してそうではないと思うが?」

「だって…」

「それに別に発育も悪くないだろ」


 な、と。

 何かを思わせるおててはぺしんと叩いとく。くすくす笑うリアスは、困るって言っておきながら楽しそう。


「…やっぱり、きれいなお姉さんに声をかけられるのは、うれし?」

「何故そうなる」

「困るって言ってる割に、たのしそう」


 思ったまま、言えば。


「そんなわけないだろ。声は迷惑だ」


 けれど、と。


「お前がやきもちを焼くのは嬉しいからな」

「…焼くでしょ、そりゃ」

「普段なんでもいいというような雰囲気のお前が、な」


 抱きしめ返されて、あったかい温度に埋もれてく。


「割とやきもちを焼く彼女は嬉しいものだぞ」

「さいで…」


 ぎゅっと、さらに強く抱きしめ返して、家でするみたいにすりよった。


 リアスのにおい。あったかい温度。


 …どうしよう。

 今、ここでこんな風にやさしくギュッてされたら。


 だめって言うために顔を上げて、名前を呼ぶ。


「…リアス」

「うん?」


 そうしたら甘く返されて。あぁもういいやって、口を開いた。


「ひとりじめ、したい」

「!」


 今わたしどんな顔してるんだろう。きっとまゆが下がってるのかな。いじけた顔かな。

 でも、今は構わずに。


「デートも、行きたいけど」

「……」

「今は、リアスをひとりじめしたい」


 ダメ? なんて。


 わざと首をかしげて聞いたら。


「仰せのままに?」


 大好きな王子さまはわたしにひとつ、キスを落とす。

 それに微笑んで、「帰るか」って声にうなずいて。テレポートして家へと向かった。



 そうしておうちに帰って、リアスとの時間を堪能したら、寝るときに「やきもち焼かせるのもいいな」なんて言うから、それはお断りしといた。


『嫉妬で狂っちゃう』/クリスティア



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