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ソラのお仕事 ~浮遊大陸観光案内所受付嬢のいつもの一週間~  作者: 玉部×字
Day 0

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Departures


 西暦2020年を越え、令和に入った今日。


『この世でもっとも高いチケット』


 と言えば誰しも同じ飛行機便を思い浮かべるようになっている。

 それは中東の飛行機会社のファーストクラスではなく、誰も聞いたことのない航空会社の便である。


 その航空会社の便は一日に世界中を合わせて二便だけ。

 西はロサンゼルスから、東は成田からの一便づつだけ。


 この便のためだけに専用に設けられた成田空港第4ターミナル。


 止まるのは勿論専用の機体。

 漆黒に七つの赤い星のジェット機、SR250通称”ビックブラック”である。


 無論チケットは激レア。プラチナチケットを飛び越えてレジェンドチケットとも。

 何故なら全世界対象の抽選方式でしか販売されない。生体情報の登録が義務。転売も譲渡も許されない。

 その上、抽選は年に一回。その年の便、およそ600便を一度に抽選する。

 初回の抽選には全世界20億人超が応募し、倍率は1万を超えた。


『世界でもっとも高いチケット』


 そんなものに20億人も応募する、出来る。

 その理由はチケットが無料だから、ロスや成田までの移動費すら出る。


 なら”高い”のは倍率か? と言うとそうではない。


 成田から二時間もあれば、超音速機であるビックブラックはパラオ沖東350km地点にまで到達する。

 既に高度は13000m――通常のジェット機ではぎりぎりの高度でも専用に開発されたビックブラックは余裕の安定飛行。


 雲の上、濃紺の空の中を飛ぶビックブラックの機内にポーンと合図が発せられる。


「スカイハイコンチネンタル航空201便をご利用の皆さま」


 乗客は自らの理解できる言語が発される前にそわそわとしだす。

 全員エコノミーの狭い座席で、石油王から学生まで一斉に次の言葉を待つ。


「現在高度13400mを飛行中でございます。到着は定刻通り35分後を予定しております。それでは左手をご覧ください」


 自分の言語が流れて来て理解する前に、最初の一人が左側の窓に動いた時点で客は一斉に左手を見た。

 あるものは窓に齧りつき、あるものは札束を渡して座席を譲って貰って、あるものはみんなが見やすいように窓前を明け、あるものは長い望遠レンズを付けたカメラを中の席から構えて。


 一様にその時を待った。


 窓の外、ビッグブラックの黒い翼の向こう。

 黄金に光る雲海の更に向こうを、目を輝かせて待つ。


「後ろっ」


 誰かがそう口にすると、窓の向こうに釘づけの顔が一斉に後ろに向いた。

 黒い翼の後ろ、やや下方の雲が割れる。まるで神話の海割りのように黄金の雲海が二つの分かたれていく。

 どんどんと割れが広がっていくと、その中を見せるように飛行機は左側へと傾く。


「やっぱり――」


 眩く反射する黄金の光の中にちらりと見える緑や土の色。

 それが見えると乗客は同じ台詞を叫んだ。


「本当にあったんだっ!」


 何故、ビックブラックのチケットがもっとも”高い”のか。

 それはスカイハイコンチネンタル航空、200便、SR250の向かう先にある。


 パラオ沖東400km高度13000m。

 この世でもっとも高い位置にある空港。


 『浮遊大陸』の空港だからだ。


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