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魔術学院のセレスティア  作者: タピオカです。
一学年、一学期
9/13

夕食

 街へ帰還し、対象の品を納品して学院に戻った後、夕飯として食べたのはグリズリー肉のフルコースだった。

 薬草を回収したマーレと再度合流したその後、ステラと二人でベントボアの角を薬草に漬けている間に、マーレがグリズリーの死体から食べられる部分をたっぷり剥ぎ取っていたのだ。


 マーレは寮の共用キッチンでも存分にその辣腕を振るい、ヒレ肉はステーキに、ロースやランプ、臓物は野菜とまとめて煮込んで鍋にし、背中に背負って持ち帰る量の肉をあっという間に捌き切ってみせた。


 どう考えても三人で食べ切れる量ではなかったが、夕飯時より前に出来上がったのが幸いだった。レーダス、イエロ、ヴェルツの三人を呼んで、数の暴力でなんとかすることに出来たからだ。

 ステーキはそのまま、鍋は量が多かったので二つの鍋に分けられ、一階のキッチンから最も近いレーダスの部屋に運び込まれた。


「じゃあ、早速食べましょうか」


「やった! もうお腹ぺこぺこだよ〜」


 マーレの台詞を合図に、ステラが早速ステーキへとフォークを延ばした。


「んーっ! このお肉めちゃくちゃ美味しい!」


「うおぉ、こんな美味い肉食ったのは初めてだ」


 隣に座ったステラが目を輝かせてそう言うと、イエロもそれに続く。グリズリーの肉というのは食べたことが無かったが、二人の反応を見るに相当美味しいようだ。


「どれどれ……」


 厚切りにされたグリズリー肉のステーキ。表面はこんがりと焼き色が付いているが、中は程よく桃色が残ったままだ。フォークを突き立てると柔らかく刃が沈み込み、ぷつりと皮を破って突き刺さる。

 一切れ口に入れると、ハーブの香りがふわりと広がる。噛むごとに熱い肉汁が溢れ、強い旨味とスパイスの刺激が口の中を満たしていく。


「う〜ん……確かに、とっても美味しいわ」


「あぁ、美味いな……」


 唸るセレーネとレーダスに便乗して、ヴェルツも大きく頷く。


「ふっふっふっ……そう言って貰えると、作った甲斐があるってもんです」


 マーレは腕を組んで、嬉しそうにしたり顔をしてみせた。

 大好評だったステーキは、食事を始めてから三分と経たない内に無くなってしまった。もともと量が少なかったのはあるが、それにしても美味しすぎたのだ。

 鍋の方はといえば、こちらも負けじと美味だった。脂の甘みがスープに溶け、こってりとした旨味を感じられる。


「ほら、あんたが一番怖い目にあったんだから、たくさん食べなさいよ」


「うん! こんなに美味しい物めったに食べられないからね、食べられる内に食べておかないと」


 既に四杯はスープを平らげているが、ステラの食欲は衰えを知らないようだ。よそってあげた五杯目にも嬉々として手をつける。


「そういえば、ヴェルツちゃん……だっけ? こうして話すのは初めてだね!」


「へっ……!? は、はい、ヴェルツ・ヴィエートフィと申します……」


 艶のある深緑の髪が目を引くヴェルツは、かなり重度の人見知りだ。よほど相性がいいのか、マーレとは安心して話せるようだが、それ以外の人と話すのはあまり好きではないようだ。


「ほれはらほろひくね!」


「こら、食べながら喋るな」


 言いつつ、ステラの頭にこつんと手刀を当てる。


「にひへも……一時はどうなるかと思ったけど、生きて帰ってこれたし、美味しいお肉も食べれたし、終わりよければ全て良しって感じだね」


「そうね、あんたがそう言うなら、休日の使い方としては案外悪くなかったわ」


「にしし……そういってもらえて良かった!」


 食事を終えた後も話が弾み、浴場が閉まる直前までだらだらと居続けたため、結局六人が解散したのは時計の針が九時を回った頃だった。

《魔物の肉》

獣系の魔物の肉は市場に広く流通し、都市部では毎日の様に消費されている。

しかし、熊型やドラゴン系の様に危険度の高い魔物の肉は市場には出回りづらい。


熊肉食べてみたいですね。

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