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魔術学院のセレスティア  作者: タピオカです。
一学年、一学期
8/13

終結と安堵

 腕を斬り飛ばした拍子に、グリズリーの受け止めていた大木が地面へと落ちた。ドズン! と低い音を響かせて砂埃を上げ、その衝撃で、周囲の木々に停まっていた小鳥達が一斉に空へ舞う。


「…………終わった、わね」


 過度の集中から解き放たれ、思わず息が漏れる。

 

「セレーネちゃんッ!!」


「わっ……!」


 セレーネは、自身の胸を目掛けて突っ込んできたステラを転びそうになりながらも受け止めた。

 抱きついてきたステラの腕が震えているのに気づいたセレーネも、白銀の長髪を纏った華奢な身体を、優しく支えるように腕を回す。


「ごめん、私怖くて、動けなくって、セレーネちゃんが死んじゃうかもしれなかったのに……」


「この程度の魔物で心配されるなんて、私もまだまだね。

……怪我はない?」


「うん、おかげさまで」


 ぱっと見たところ、ステラの制服には傷一つ無い。セレーネの制服にも、爪の一撃をぎりぎりで躱した際に帽子の鍔に入った切り込み以外に外傷は無かった。


「……よかった」


 仲間を守れた嬉しさから、セレーネは思わず目を細めた。それからセレーネは、自分でも気づかない内にステラの白髪を撫でていた。

 それはまるで、幼い頃姉にあやしてもらった時の様に。ある種祈りにも似た、恐怖を薄めるおまじないの様に。 


「──えっ」


 ステラが小さく声を漏らしたので正気に戻ると、セレーネは自身の距離感の無さを自覚し、慌てて白髪から手を離した。

 しかし、ステラの頬はなぜだか熱でもあるかのように真っ赤に染まっていたのでセレーネは訝しんだ。


「ごめん! 汚い手で触っちゃって…………具合悪いの?」


「……ああいや、全然そういうのじゃなくて! その……」


「セレーネさま〜っ!」


 妙に焦るステラの話を、聞き馴染みのある大声が遮る。振り返ると、マーレが大きく手を振りながら走ってくるところだった。

 マーレは少し息を切らしながらも辺りを見回して、グリズリーの死体を見るなり、目を丸くした。


「……魔力行使と木が倒れたので戦闘が起きてるのは分かってましたが、グリズリーと対峙してたなんて……」


「大丈夫、二人とも無事よ。薬草はあっちに置いてあるわ」


 セレーネは再度振り返って、先程グリズリーに出くわした方向を指差した。杖はずっと装備していたが、薬草やその他の荷物は先程採取していた木の根元に置きっぱなしだった。


「お二人はここで休んでて下さい、私は薬草取って来ます! 何かあったらすぐ撤退しますので!」


 マーレはそう言うと、バックパックをその場に降ろして森の奥へ駆けていった。

 置いていかれたバックパックの上部には、ベントボアの大きな角が一本、紐で結いてあった。二本目は薬草で包まれてバックパックの中だろう。後は二本目を包む薬草さえ揃えばクエストはほぼ達成だ。


 セレーネは先程斬り倒した大木の切り株に腰掛け、戦闘後も変わらず身体に纏わりついていた強張りが少しづつ薄まっていくのを感じながら、瞼を閉じて安堵に浸った。


「……それで、さっきはなんて言おうとしてたの?」


 少し休まった所で、地べたに腰を降ろして、切り株に背中を預けたステラに話しかける。


「ん? そうだね……助けてくれてありがとう、かな!」


 ゆっくりと振り向いたステラは、いつものように、白い歯を見せて目一杯笑った。 

《大角猪の角の薬草漬け》

ベントボアの牙は非常に大型で、皮膚を突き破って成長するため、便宜上角と呼ばれる。

彼らの角には匂いを感じる器官があり、死亡から一時間ほどはその機能が持続するため、その間に薬草に漬けることで薬効成分を浸透させることが出来る。

完成した物は、様々なアイテムの製造に活用される。



へへ、宣言通りですぜ。ちゃんと投稿しましたぜ。

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