囚われた心と心
「何故………」
その一言が俺の口をついて出る。
もう、すぐそこだったはずだった。俺は攻撃をしようと、しようとしたつもりだった。記憶の中の桜梨に縛られていた鎖を、ようやく振り切るのに一歩、いや、二歩前だった。
俺は前に進む決断をした。したつもりだった。
油断したはずはない。だが、現実は目の前にあった。
桜梨の蔦が、鋭く、深く俺の両腕を貫いている。痛みが語りかけてくる。これが、俺の弱さの象徴だと。まったくその通りだと、痛感する。
「いつだって、俺は強くなかった……」
振り返れば、俺はやはり桜梨に未練があったのかとしれない。半年間、言い聞かせてきた。今日も散々自分に言い聞かせた。
それでも
まだどこかで、頼ろうとしていた。
また俺は桜梨に、頼りたかった。
この未練を、断ち切れない。
情けないとつくづく思う。
「菅田なら、勝てただろうな。」
菅田は違う。あいつは感情を割り切っているから、いつも冷静に構えていた。俺とは違っていたんだ。
俺は桜梨を信じてしまっていた。それが、あんなに明確に自分の思いを断ち切ろうとしていたはずなのに、あれだけ迷っていた。まだその未練がここで足を引っ張っているのか。
「また、俺は…………」
痛みに耐えながら、俺は思う。これが本当に俺の限界なのか?桜梨の蔦に縛られたままで、何も出来ない自分に嫌気が差す。でも、まだ……まだやれることがあるはずだ。
「これで、これで終わるわけにはいかない。」
すぐにでも振り払いたい。体の自由さえ縛り付けてくるこの束縛を。自分が信じられなくても、無理矢理にでも、前に進むしかないんだ。俺は。
──────
「西、どうしてこんなにも迷っているの?」
私はその姿を見て、心の中で問いかける。彼が未練を断ち切れずにいることは分かっていた。でも、どうしてこんなにも苦しんでいるのか。その迷いが、こんなにも深く根を張っているのか。
「私はもう、前に進んだ。だけど、あなたはまだ……」
あの頃の西の姿を思い出す。どこか頼りなさげだった彼を、私は支えようとしていた。彼も、私を支えてくれていた。でも、結局、それが彼にとっては重すぎたのかもしれない。私の優しさが、逆に彼を縛りつけてしまったんだろうか。
「でも、今のあなたがあるのも、私のおかげじゃない。」
西が苦しみながらも、前に進もうとしている。それは、私が西を支え続けたからだと信じたいけれど、実際には西が自分自身で立ち上がらなければ意味がない。私は彼に、最後の一歩を踏み出す力を与えられたのだろうか。
「でも、私はもう戻れない。」
西が手を伸ばしてくるように見えるけれど、私はその手を取ることはできない。私の中で、西との未来はもう過去になった。それでも、向かい合っている限り西のことを完全に忘れることはできない。それが私の弱さだと認めるしかない。
「これが最後だよ、西。」
それでも、私は前に進むしかない。この戦いが終われば、また新たな一歩を踏み出せる。私はもう、過去に囚われることはない。前を向いて、上を向いて、私だけの道を……