表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢みる二人  作者: ぴな丸
5/13

上を向いて


試合開始の合図が鳴ると同時に、桜梨は能力を発動させた。足元から緑の蔦が生い茂り、戦場を変えていく。桜梨の力「緑に愛されし者」は、攻防一体となった能力であり、相手を制圧しつつ仲間を守ることができる。


「まずは地形を味方にしないと。」


落ち着いていこう。相手は西と菅田君──特に西の存在が気にかからないわけではない。それでも私は、試合に全力を注ぐことを決めていた。


「西は、どう戦ってくるんだろう。」


彼と過ごした日々が頭をよぎる。彼は不器用で、時には頼りないところもあったけれど、心の奥には優しさを持っていた。それが私には分かっていた。だからこそ、破局の時は彼を傷つけてしまったことに心が痛んだ。でもそれが私達にとって最良の決断だった。だからここまで関わってこなかった。



───


「今はそれを考える時じゃない。」


私は自分に言い聞かせる。

隣で戦う矢矧ちゃんに信頼を置きながら、まずは蔦を使って西の動きを封じるべく攻めに出た。しかし、西の能力「要塞構築」がそれを阻む。蔦を次々と弾き飛ばし、彼は一切引かない姿勢を見せている。


「強くなったんだね、西。」


その姿を見て、少しだけ胸が締め付けられる。彼がどれだけ苦しんできたのかを私は知っている。破局の原因は、私が「前に進もう」としたことに対して、西が過去に囚われてしまったことだった。


「でも、あなたならきっと乗り越えられる。」


私はそう信じていた。戦いの中で、彼が何かを掴み取ることを。それに、彼も前に進めると。



───


蔦を操りながら、西との間合いを詰める。


「西、あなたにはまだできることがある。」


私の声は静かだったが、確かに届いているはずだった。


西は一瞬動きを止めるように見えた。しかし、すぐに要塞が形を変え、私の攻撃を受け流す。


「変わらない部分もあるけど、それでいいの。」


私は微笑んで言った。戦いながらも、彼が自分らしさを取り戻すことを願っていた。そして、同時に自分自身もこの試合を通じて前進する覚悟を固めていた。



───


「矢矧ちゃん、次の手を。」


私は仲間に声をかけながら、戦場全体を見渡した。西との関係も、今ここでの戦いも、すべては自分が未来に進むための一歩だと思っていた。


「西、私たちはお互いに成長しないといけないよね。」


その言葉は届かなくてもいい。ただ、私自身の心の中で次への力となればそれで十分だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ